東京国立博物館

前略 雑用にまぎれてお返事が遅くなって御免なさい。
また私の短歌をホームページにアップして頂き有難うございました。

美術展の感想文もご要望とのことですが、過去と現在では美術に関する考へ方もかなり変わっていて、オキテルさんの参考にはなりませんので、美術館、博物館、資料館で私が体験したことや感じたことなどをご参考までにご披露します。  

私は日本の北は北海道から南は九州・沖縄まで、47都道府県の有名な美術館、博物館、資料館はほとんど、無名なものも多数見ております。

それは私個人で行ったもののほか、私が所属していた団体が、毎年 春、秋の2回各地の史跡を巡る旅行をしていて、その企画・立案を私が担当していたので、その見学先に必ず美術館、博物館、資料館を入れていたからです。

しかし、当今は、どこ共箱物は立派ですが、観客はまばらで、私が個人で行ったときは私だけしか居ないこともありました。

それは、東京とて例外ではなく、なかには普段は消灯していて、観客が来たときだけ点灯する美術館もありました。

そこで、各美術館、博物館は、有名作家の作品を集めて特別展を開催したり、有名美術団体展を誘致するなど、種々工夫をこらして観客を集めようとしています。

そうした実態をまず日本を代表する東京国立博物館から始めましょう。
  • 東京国立博物館((以下東博)...上野公園元寛永寺本坊跡


本館

本館、表慶館、東洋館、法隆寺館、平成館からなる。

所蔵品約11万点、重文約5百50点、国宝約80点、質量ともに日本最高、最大の博物館で観覧者は年間約百万人(これには特別展が大きく寄与している。)

私は東博に8回行きました。内訳は常設展1回、東洋陶磁展1回、国宝展2回、東洋館開館記念展1回、モナリザ展1回、着衣のマハ、裸のマハ展1回、平成館完成記念展1回です。

常設展に行ったときは、食堂も隙いていましたが、特別展のときは何時(いつ)も食堂が満員で、昼食を食べることができなかったので、次回からはサンドイッチや缶コーヒーを持参して本館前庭の芝生の上に座って食べていました。

この8回のうち自館所蔵品のみの会は、私の記憶では常設展と東洋館開館記念展の2回だけでした。

膨大な国宝、重文を所蔵しながら、外国の有名作品や日本の他館の作品を借用しなければ集客できないのは何故でしょうか。それは、日本で一番のもの、いわゆる目玉作品が少ないからです。

それでは東博の国宝、重文の価値が低いのかというと、そうではなく知名度が低いのです。

もっと国宝、重文の展示を増やして、それが如何に価値の高い作品であるかを、あらゆるメディアを通して宣伝するべきです。

確かに日本の美術品はデリケートで劣化しやすい作品が多く特に日本画は紫外線に弱く、劣化し易いので雪舟の「冬景山水図」、等伯の「松林図」など超一流の国宝があるにもかかわらず、常設展では滅多に観ることができません。


しかし、劣化するからといって、収蔵庫にしまい込んでいては、宝の持ち腐れです。何とか劣化防止に工夫をこらして、露出度を上げれば作品の知名度は、随分向上するのではないかと思います。

私は5大陸の主要美術館、博物館を20館ほど見て来ましたが、それらに比べて東博は色彩感が地味で魅力に乏しいと痛切に感じました。

それでは日本を代表する魅力ある文化財をどこにあるのでしょうか。それは登録世界遺産の所在地を見ればよく判ります。

東日本の世界遺産は,平泉と日光だけですが、西日本は古都京都の文化財(清水寺ほか21件)、古都奈良の文化財(東大寺ほか8件)、法隆寺、紀伊山地の霊場、姫路城、厳島神社ほか3件、計9件もあります。

先年 東博で開催された興福寺の阿修羅展ではこの像1点だけで観客数95万人、写真や本にもなって、一大ブームを巻き起こしました。東博にこれ以上の集客力のある作品があるでしょうか。これは東博の国宝全部を集めてもかなわないほどの魅力でした。

しかし、阿修羅は興福寺では特別の存在ではなく、数ある国宝の一つ以上のものではありません。また奈良には阿修羅と同等かそれ以上のものが幾らでもあります。もし、東博に奈良、京都の文化財の1%でもあれば、東博は世界有数の博物館になるでしょう。

だが、それらの作品は寺院の本尊であるものが多く、移動は困難なので現地で拝むしか方法はありませんが、本尊以外の作品は東博で借り上げることは可能だと思います 。

日本にはまだまだ知られざるお宝があるのではないでしょうか、近年 過疎化で檀家がいなくなり廃寺になるケースが増えていますが、そんなお寺にお宝が隠れているかもわかりません。

数年前ある町のある寺の仏像が運慶の作とわかり、13億円で買われたというニュースは記憶に新しいでしょう。そんなお宝を発掘するのも美術館・博物館の重要な使命だと思います

東博の作品購入予算が幾らあるか知りませんが仮に10億円とすると、1億円の作品を10点買うより、10億円の作品を1点買うべきです。東博に求められているのは、量より質でしょう。

美術展の感想とは異なることを種々書きましたが、もし東博の特別展を観覧する場合は開館直後は込むので先に本館の常設展をざっと見て(二階に国宝コーナーがある)その後平成館の特別展を見るのが効率的です。

2012.10.04_1

[2]につづく