次は、皇室と旧2大財閥の美術館を見てみましょう。
- 宮内庁三の丸尚蔵館...大手門を入ってすぐ
皇室から国に寄贈された国内外の貴重な絵画・書・美術工芸品9千5百点、鎌倉時代の絵巻「蒙古襲来絵詞」や伊藤若冲作品など全て品格のある作品で保存状態も良好、無料です。

- 三井記念美術館...日本橋三井本館の7階
三井家が江戸時代から収集してきた絵画、茶道具など、国宝6点を含む4000点を収蔵。

目玉作品は円山応挙の代表作「雪松図屏風」(国宝)と志野茶碗銘「卯花墻
(うのはながき)」この茶碗は日本製焼物の国宝3点のうちの一つで、日本製焼物の頂点をなすものです。
なお、焼物は日本が世界に誇り得る唯一の美術品です。
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静嘉堂文庫美術館...世田谷区岡本
三菱財閥の岩崎家のコレクション、国宝7点重文83点を含む収蔵美術品6500点
この内必見は「窯変天目茶碗」(国宝)。
この茶碗は中国南宋時代の焼物で、焼成中に釉薬の気泡の破裂によって生じた窯変が、黒い地釉の上に満天の星のようにきらめいている茶碗で、世界の至宝と言われている世界一の焼物です。
次は、日本・東洋美術中心の美術館と洋画中心の美術館に行ってみましょう。
- 根津美術館...港区南青山
日本の絵画、茶道具から古代中国の青銅器まで国宝7件、重文87件を含む約7400件を収蔵しているが、なんと言っても必見は、超一級の国宝
尾形光琳の「燕子花図」と「那智瀧図」です。

「燕子花図」は数種類の型紙を組み合わせて描いた、今で云えばデザイン画ですが、そのデザインがあまりにも斬新なので、私はこの絵を江戸モダンといっています。
「那智瀧図」は鎌倉時代の作品で、劣化を防ぐため国宝展のようなときでなけ
れば滅多に展示しません。
- 山種美術館...渋谷区広尾
当館は日本画専門の美術館で、近代日本画を中心に約1800点を所蔵。
近代日本画の大家、有名作家の作品はほとんど揃っている。なかでも、速水御舟の作品は120点もあり、代表作「炎舞」は、独創性が高く早々と重文になりました。
私は当館が日本橋兜町に在ったときには2度行きましたが、広尾に移転してからは行っていません。
次は洋画中心の美術館に行きませう。
- ブリジストン美術館...中央区京橋
以前は日本画も収蔵していて、大正ロマンの傑作青木繁の「海の幸」(重文)も展示していたが、日本画は久留米市の石橋美術館に移り、東京は西洋美術中心の美術館となっている。
所蔵品約1800点、名品揃いで、どれか一つ代表作を揚げろといわれても困難ですが、しいて揚げればピカソの「腕を組んですわるサルタンバンク」でしょうか。(サルタンバンクとは縁日などで即興の芸を見せる下層の芸人だそうです。)
私が展示ホールに入った瞬間パッと眼に飛び込んで来たのがこの絵でした。近づいてみると細い線でさらっと即興的に描いたような輪郭線のどこにも修正した痕がなく、ピカソの筆技にただただ感嘆するばかりでした。
この作品はピカソの新古典主義時代の作品で、私が見たピカソの作品の中でも最も端正に描かれていました。
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損保ジャパン東郷青児美術館...西新宿
東郷青児自身の作品と彼が収集した作品を合わせて約450点を核に、約650点を収蔵しているが、ここは何といってもゴッホの「ひまわり」に尽きます。
この絵はひまわりの花も、それを生けている壺もバックも黄系統に統一しているが、それでも花の存在感を殺ぐことなく花を描いてこれほど迫力のある絵は見たことがありません。
最後に私の好きな美術館を紹介します。
- 東京都庭園美術館...港区白金台
当美術館には美術収蔵品はなく、美術展等の貸ギャラリーになっていますが、旧朝香宮邸で、20世紀の初めにヨーロッパで全盛を極めてわめた、アール・デコ様式の御殿で、日本で唯一の建物です。

内部装飾はフランス風ですが、日本的意匠も加味されており、各部屋の照明、把手、ラジエーターカバーなぞ、全てオリジナルの一品物です。
この建物は、建築史上においても、文化財的価値があり、いずれ重文、国宝になることは間違いありません。庭園美術館と称しておりますが、庭園は広いだけで左程のものではなく、建物自体がこの美術館のお宝です。
東京にはまだまだ優れた美術館、博物館が沢山ありますが、今回はこれくらいにします。
なお、美術館に行くときは、目当ての作品が展示されてない場合がありますので、事前に展示の有無、展示スケジュールを調べておくこと。
私は美術品の観賞だけではなく、蒐集もしていました。20代の頃小さい古備前の徳利を買ったのが始まりで、日本、朝鮮、中国の焼物、日本画、洋画、茶器など、古美術だけではなく、現代物にも手を出しその数は百点以上にもなりました。
市の文化施設で毎年開催される「我が家の愛蔵美術品展」に連続9回出展しました。今は大半整理して10点あまりしか残っていません。
蒐集と並行して焼き物の制作もしていて、主に茶の湯の茶碗を焼いていて、作品を県美術展に出品すると連続3回入選し、県の美術会員に推挙され、思いがけずアーティストの端くれに名を連ねました。
そういうこともあってか、美術関係者の中では知る人ぞ知るという存在になり、市の文化施設の学芸員から、作品の真偽、評価などの相談を受けることもあって、その学芸員と美術談議に花を咲かせておりました。
その文化施設には、美術観賞の参考になるようなものがなかったので、私が見た美術展の図録を約百冊その施設に寄贈しました。それを見て学芸員は、野田さんほど数多くの美術展を見た人はこの市にはいないと云っていました。
私は正倉院展に11回(正倉院展は約10回で展示物が一巡する)、日展、院展、二科展の地方巡回展は毎年観ていました。このような大美術団体の本展は作品数も来観者も多く混み合うので、地方巡回展のほうが落付いて観られます。
私が若いときに上野の東京都美術館で日展の本展を観ましたが、作品数も千点以上あり、大家、有名作家の前は黒山のような人だかりで十分に観賞することができず、一遍懲りでした。
千葉県は東京に近いので、地方巡回展の有無は知りませんが、あれば巡回展の方をお勧めします。
なお、東京以外にも全国には素晴らしい美術館、博物館が沢山あります。私はリタイアしたら海外の文化財を見学しようと計画していました。すると私のリタイアを待っていたかのように、市立美術館の館長に就任を要請されましたが、それを固辞して海外旅行の方を優先しました。
長ながと、あまり参考にならないことを書きましたが、私は美術的造形物は分野を問わず皆大好きで、それを理解するため100冊以上の書物を読み、テレビでも美術番組をよく見ています。
しかし、「百聞は一見にしかず」で、何といっても本物を観ることが、理解し、楽しみ、教養を豊かにする最善の方法だと思います。
書物や写真で見ていたものの実物を目の前で見たときの感激は、忘れがたいほど嬉しいものです。
オキテルさんにも是非できるだけ多く、名品を観ることをお勧めします。
10月4日
野田 進
2012.10.4_3(完)