トゥーランドット
2006/10/3

先日、42年ぶりにオペラを観た。しかも、42年前に観たのと同じ、プッチーニの未完の遺作「トゥーランドット」である。

42年前に観たものは、1964年、東京オリンピックの年、東京都が、オリンピック協賛芸術展示のひとつとしてオリンピック開催を10日後に控え開演したものである。

今回観たのは、来日中のウクライナ国立歌劇場によるもので、キエフオペラと呼ばれているらしいものである。積極的に観たいと思って切符を入手にした訳ではない。友人が、ご夫婦で行く予定で買っていたが、奥さんの都合が悪くなり奥さんの分を譲ってくれ、友人と一緒に観たという次第。

キエフオペラは、ボリショイ、キーロフと並ぶ旧ソ連邦の三大国立歌劇場のひとつで、130年以上にわたる伝統と格式を誇るのだそうだ。

そのキエフオペラが、総勢210人の引っ越し公演で初来日した。9月下旬に日本に来て、12月初めまで、60数回に及ぶ公演を行うが、我が住まいに比較的近い、市川市文化会館での公演切符を頂いたのである。

42年前、観たときは、原語での公演で、オペラの筋も知らずに観たので、殆ど理解できず、居眠りをした覚えがある。

その時のプログラムが何故か残っていた。

オペラは、仮に日本語でやったとしても、あの特殊な(小生には異様な)発声法(発音法?)で歌うので、意味不明になる。

従って、きちんと筋を覚え、どこでどのような歌が歌われるかを知ってないと本当の鑑賞は出来ず、また居眠りをすることになると考え、この42年前のプログラムを何回か読んだうえ、それを持って出掛けた。 

       

座席はS席という贅沢な席であった。S席の切符にはプログラムが付いているのだが、友人は、持ってくるのを忘れたため、入場時改めてもらったという。家に戻ればあるからと言うことでプログラムも譲ってもらった。

42年前のプログラムに比べ、表紙は見栄えがしないが、中身は遙かにこちらの方が充実していた。開演前と幕間に解説を読んで、鑑賞した。

加えて、最近は、この種の催し物に良くあるサービスだが、舞台の左右に、字幕が出て、歌の文句が日本語で示される。これは大変助かる。おかげで大いに楽しむことが出来た。

市川市文化会館にはこれまで2回来たことがある。オーケストラピットがあり、オペラ公演が出来るようにはなっているのを今回初めて知った。座席数も1945あり、新国立劇場のオペラ劇場よりも多い。しかし、舞台の奥行きは余り無くオペラ用には、少々難があるのではないかと感じた。さはあれ、都心ではないところでオペラが観られるというのは悪い話ではない。

オペラだが、時は伝説時代(とプログラムに書いてある...要するにおとぎ話の「昔、昔」の持って回った言い方だろう)の中国、トゥーランドットという、絶世の美女姫が、求婚する男に3つの謎をかけ、全ての謎を解いたら、その者の花嫁になるが、解けない場合は、その者の首をはねると宣言している。

謎は難問で、良い婿を探すためより祖先の復讐のために、このようなことをしている。既に何人もの異国の皇子の首がはねられており、今日も月の出とともに、謎を解けなかったペルシャ皇子が首をはねられるというところから舞台は始まる。

ここに、この謎を解く別の皇子が現れて、トゥーランドットを真の愛に目覚めさせる。これに、皇子の父で、王位を奪われ流浪している王とその王につきそう女奴隷の皇子への純愛のエピソードが絡まるという他愛ないもの。

他愛ないと思いながら、自分が犠牲になって、皇子にトゥーランドットを射止させるという女奴隷の純愛に不覚にも涙が出てしまった。つまりそれだけ楽しめたということである。

第3幕の「誰も寝てはならぬ」という皇子の歌うアリアが、トリノオリンピックで優勝したフィギュア・スケートの荒川静香選手が演技に使った曲だそうだ。

残念ながら、補聴器で聴く音楽は、どうもひとつメロディーを把握し切れない。従って、皆、いい声・いい音と大変な声量・迫力を持っているなとの印象は強かったが、アリアや音楽はそれほど記憶に残らなかった。改めてレコードかDVDを買って聴いてみたいと思う。

悲しいかな、オペラはもとより音楽を楽しむには、ある程度聴き込んでメロディーを覚えてからでないと、楽しめない身になっているようだ。