原田泰治展とピエゾグラフ
2006/1/29

先日、原田泰治という画家の展覧会の切符をある方から頂き、カミさんと二人で見に行った。

原田泰治という画家が、旧ユーゴの一部クロアチアのナイーブ・アート(アカデミックと呼ばれる理論的な学問を積んだ正当派の描く絵に対し、科学的な遠近法や明暗の扱いなどに無縁で、美術知識も浅く素朴な画風で絵を描く素人画家...マルチメディア・インターネット事典)の作家達と親しいと言うことで、そちらの画家の作品も展示されていた。

原田泰治という画家、余りよく知らない画家であったが、その絵には感激した。何ともほのぼのとした雰囲気。子供の頃見たなあという郷愁を呼び覚まされるのどかな風景。全体として、上部に広がる感じの構図で、建物が真っ直ぐに建っていないおおらかなデフォルメ。漫画的ではあるが、何とも明るく穏やかでにこやかな人物の表情。

素晴らしいと思ったのは色。とにかく綺麗である。明るく澄んだ空や木や花。おおらかでのどかな画風にも拘わらず、目を見張るほどの細部の描画の細かさ。どの一枚を見ても気分が和む絵であった。

普通、同じような画風の絵が延々と続くと結構飽きが来るものだが、最後まで、全く飽きることなく鑑賞した。

何十年も昔、ゴッホの跳ね橋の絵を見たときの感動に近いものを覚えた。あの色の鮮やかさは、アクリル絵の具と言うことにも関係しているのであろうか。

クロアチアのナイーブアートの作品も見たが、原田泰治の絵の感動には及ばなかった。
ナイーブアートで面白いと思ったのは、ガラスに絵を描く技法。絵の具で描いた面の反対側からガラス越しに鑑賞するため、全て反対像で描くことになる。当然、署名も反対像で書く。絵が大変鮮明に感じる。

当然のことながら、絵筆の運びによる絵の具の凹凸はない。真っ平らである。ガラスで保護している形になるため、絵の劣化も少ないとのこと。

感動の余韻を持って会場を出たところで、原田泰治の絵の複製画の展示販売があった。EPSONが開発した、インクジェットデジタル印刷技術、ピエゾグラフによる復元だという。この技術、色の再現はもとより、画材や絵の具の質感、絵筆の運びの凹凸までも再現するという。

なるほど素晴らしいと思ったが、複製の絵で価格が、25号(80x60センチメートル)〜30号(90x65cm)程度のもので40万円近くしていた。

有名な画家のものなら、複製画と言えどもこの程度すると言うことなのか、作者の署名(自筆)が付いているからなのか、それとも、この複製技術では、そのくらいのコストがかかるのかは分からないが、余り手頃だという印象は持てない。

しかし、素晴らしい技術だなとは思った。この技術で、名画の複製が、気軽に手にはいるようになるなら素晴らしいと思う。