OKさんを送る言葉
2005/8/4

大黒さん、会社を同じくして以来、40年を超える付き合いでしたね。大黒さんと私との間のことにかぎられ、しかも、いろいろあったことのほんの一面しか語れませんが、想い出をお話しし、お別れの言葉としたいと思います。

私が、それらしいオーディオ設備を初めて揃えたとき、我が家に来てくれましたね。我が家のレコードの枚数の少なさに驚いたようで、以降、我が家へ来るたびに、レコードをプレゼントしてくれました。そして、あなたの音楽への思い入れを色々話してくれましたね。
 
大黒さんは、室内楽が好きで、「室内楽は作曲家の心のつぶやきが聞こえるようだ」と言われたのが忘れられません。
 
もう、四半世紀も前になるでしょうか、あなたが、ご家族共々、アメリカへ長期出張することになったとき、貴方のレコード300枚位を預かってくれと頼まれましたね。「こういう音楽もあるのですよ」と私に教えるために、レコードを私に預けたのだなと、後日、気付きました。
 
預かったレコードの鑑賞記録を、アメリカの貴方に毎週手紙で送りましたが、そのことを大変喜んでくれ、「この手紙は私の宝です」と言ってくれたことも忘れられません。
 
会社を辞めてから、貴方が住む団地の管理に係わるリーダーを務められましたが、傍目に見ても、良くもそこまでと思うほどに、誠心誠意、自己犠牲をいとわずやって居られました。
 
一段落したやに聞きましたので、「いい加減に止めたら?」と苦言を呈しましたが、「新たな問題が起こって、その先行きをある程度見極めないと安易に、無責任に次に渡せない」と言われました。その直後の入院でしたね。
 
入院中一度、帰宅を許されたことがあり、そのときは、「このときぞ」とばかり、好きな曲を鳴らし、聴きながら、目に涙していたというお話を奥様から伺いました。
 
病の小康の中で、大好きな音楽を聞くことに、新鮮且つ痛烈な感動を再体験されたのでしょう。
 
音楽の外、大の山登り好きの大黒さんですから、そうして鍛えた体力と、持ち前の精神力で、きっと、病を克服するであろうと信じておりました。
 
残念ながら、こうして、新しい世界へ旅立たれる訳ですが、天国で貴方の大好きなモーツアルトやベートーヴェン自らの演奏を、感動を新たに聴く幸せを得るであろうと信じます。
 
残る私たちは、今あるこの命を、貴方がそうであったように、精一杯生きたあと、貴方と再会したいと思います。それまで気長にお待ちください。
 
安らかに、お休みください。
 
さようなら。

平成17年8月4日