各地を訪ねて(続)
列車の旅
武漢から杭州へは地上の風景を楽しもうということで列車の旅とした。13時間ほど乗っていたが、夜行列車だったため景色を見たのは夕刻と早朝のみ。
野山や農村風景は日本のそれと大差ないが、高圧送電線・鉄塔がやたら目に付いた。また、住宅は大半が褐色のレンガ造りだが、3~3.5階建ての新築個建てもよく目に付いた。
客室は一等車の4人部屋コンパートメントを取った。グループが4人居なくても4人分買い取らないと知らない人が入ってくるので買い取る必要がある。2段ベッドで冷房は十部効いており快適だった。
食堂車に行ったが、超満員で途方に暮れた。車内販売の弁当を買う気はさらさら無い。列車内警察?の目に留まり、部屋で待機するよう指示された。しばらくすると呼びに来てくれ、ついて行くと7人分空けてくれていた。何故このような親切をしてくれたのかよく分からなかったが、皆で1時間程の夕食を楽しむことが出来た。
工業特別区
上海から蘇州に向かう途中、蘇州工業特別区を通過した。地平線が見えないほど広大な工業団地。名古屋市の半分ほどの面積という。まだごく一部しか埋まっていないが、立派に整地され、道路、送電などインフラも完備しており、世界中から産業を呼び寄せているという。
これが全部最新鋭工場で埋まり、一斉にもの造りを始めたら、恐らく世界の生産の何%かをここだけで担うことになると思われる。まさに世界のもの造り拠点か。
建築ラッシュ
都市部では真新しい高層住宅が多いし、さらに現在建築中のものも多い。いくら中国は人口が多いといっても些か造り過ぎではないかと思った。そのうち空き家だらけになり、バブルとなってはじけるのではないか。
郊外部では、前述の3~3.5階建ての大きな戸建て住宅の建築ラッシュが目に付いた。規格化されたような全く同じ造りで、一家族が住むには大き過ぎると思われるが、大家族で住むのであろうか。
これまでの中国の伝統的なレンガ造りの住宅とは格差が大き過ぎる。勿論このレンガ造りは至るところで見受けられ、恐らく今でも中国の平均的な住宅と思われる。山崎豊子の大地の子に出てくるの情景はこのレンガ造りだ。
国民性?
先ず、駅とか空港或いはちょっとした公共の広場には溢れんばかり人が集まっている。集まることが好きなのか、単に人口が多い為だけなのか。そして仲間内で大声でしゃべっている。
何故あれだけ大きな声を張り上げなければならないのか。相手はさらに大きな声になる。全体としては喧騒の空間だ。ホテルのロビーでも同じで、中国人の団体さんが着くともう全員が大声でわめきあっており、近くに居る我々の会話は全く出来なくなる。レストランも大勢の人を収容する大衆レストランは然り。とても入れない。
さすが私達とお会いしてくれた方々との懇談、会食はそうでもなかったが。但しその片鱗はあった。我々の講義中にひそひそ話がこうじてかなり大声になった。私は見かねて大声で怒鳴った。もっとも日本語でなので、通訳がどの程度相手にニュアンスを伝えたか不明だが。
朝食は何処でもバイキングスタイルだったが、ここでも並んだ列にすきあらば割り込む姿が目に付く。いわゆるエチケットというものが未だ身に着いていないのかなと思った。
物価
モノと場所により大きく違う。例えばビール、ホテルの自販機で20元(1元は13円)、外に出て店で2元、10倍の違い。観光地の何処でも売っている飲料水(500CC入り)は1~2元。コーヒーはどういう訳か何処も高く、30~50元。日本と変わらない。
観光地の土産物は、それなりのモノをキチンとした店で買うと、日本で買うのと殆ど差が無いという。但し一流の店でも、2個買えば1個負けるという商売をやっているようなので、大雑把といえば大雑把。うまくやればその分は割安かも知れない。例えば龍井茶(ロンジン茶:最高級茶といわれる)、1缶200~300元する。2個買うと1個おまけだった。要するに、欲しいモノ、貰って有り難いようなモノはこちらとそう大差ないといえる。
トイレ
よく問題になる所である。勿論、ちゃんとしたホテルやレストランでは何ら問題無い。観光地の公衆便所、観光地のレストランのトイレなどに問題が有る場合が多い。我々男性は殆ど気にならないが、女性は覚悟して用を足した方がよさそうだ。前もって知らされていたので、積極的に体験した方も居られた。
いろいろ体験を聞かされた。変わった例で、結構小奇麗な店だったにも関わらず、店内にトイレが無く、あまりキレイでない複雑な路地裏をかなり遠くまで案内されたケースもある。この場合案内人が待っていないと一人で戻れない。
おわりに
今回、大陸の方は初めての旅であったが、全体の印象としては至るところ人が多くエネルギーに満ち溢れている。それから内陸地帯でも思ったより文化的生活をしている。車も満ち溢れているし、服装にしても若い人たちの着こなしは日本のそれと大差ない。とても所得格差10~20倍とは思われない。
今の高度成長があと何年続くか、もし10年も続けば日本に近いレベルになると思われる。
それから日本との関係については、我々が個々に接した方々は皆とても親切で好意的であったが、社会全体としては先日のサッカー・アジアカップに見られたように決して良いものではない。
学術・技術交流においても先ずは欧米である。内陸部では特にひどい。しかし時間と共に沿岸部から徐々に合理性が浸透し、日本の良さも認めて貰える日が来ると思われる。10年後どう変化しているか見守りたい。