はじめに
この度、東京大学名誉教授・辻川氏(その昔、小生の学位論文の副査)のお誘いで中国・武漢を訪問し、鉄鋼会社および大学で3日間の講義をする機会を得た。
武漢鋼鉄(中国有数の鉄鋼会社)の招待で、婦人同伴という大変有り難い待遇であった。初めての中国の旅でもあったので、ついでに上海、杭州、蘇州なども廻らせてもらった。
中国というと言葉は全く通じないし、最近かなり自由化されたとはいえまだまだミステリアスな国というイメージが強いが、今回は日本語の堪能な現地の大学教授(東大留学者)がフルアテンドしてくれたので、仕事を含めて何不自由無く快適な旅を楽しむことが出来た。
公的な部分、私的な部分いろいろあるが、私なりに感じた中国社会の印象を述べてみたい。
なお、私の今回の仕事の講義であるが、鉄鋼表面処理技術関係で彼等が一番知りたがっていると思われる項目を4講程取り上げ、自作のテキストで行なった。
行程
出発:6月27日成田発北京経由で夕刻武漢着。
武漢(28、29、30日):武漢鋼鉄、武漢科学技術大学にて講義
列車の旅(7/2~3):武漢→杭州、
杭州、蘇州、上海(4~6日):市内観光、中国科学技術院訪問、日系企業幹部との会食など
帰国:7月7日上海発→夕刻成田着各地を訪ねて
武漢鋼鉄:
先ず会社に着いての第一印象は、幹部が皆若い。我々に挨拶してくれた部長・所長クラスで30代~40代前半位(に見える)。講義の受講者も20歳代~40歳位。
資料はパワーポイントで作っていたのでノートパソコンを持参したが、これがこれがよく機能してくれた。つまりIT関係は日本と遜色無いほど普及している。通訳は前述の科技大教授がやってくれたので何の問題もない。
話しは出来るだけ基礎部分に重点を置き組立てていたが、質問はかなり実務的なものが多く、いわゆる即効的なもの答えを欲しがっていた。また一方では本に書かれていないような基礎的な質問もあった。勉強はしているが疑問に答えてくれる先輩達がいないと思った。
聞くところによると、武漢など内陸部の鉄鋼会社の技術導入先は殆ど欧州(特にドイツ)だという。日本に対する認識は現状では極めて低い。
もう一つ驚いたことは、武漢滞在中会社から日本でいう総務の方が一人常時ついてくれた。見張りのため? この辺に我々の自由主義社会とは異なる一端を垣間見せられた思いがした。
宿泊施設としては武鋼賓館(会社の旧接待所)が宛がわれた。なかなか立派な施設で、多分武漢市内で一番立派なものではないかと思う。大理石と厚い絨毯が印象的だった。そこで昼食を含めて3食とも取った。
施設は確かに立派であったが、従業員の接客対応は相当遅れている。お役所的で気が効かなく決まった事しかやらない、お客に対するサービス精神や、笑顔というものが無い。悪気はなさそうだが。
それからトイレの紙にも大弱り。毎日粗雑なロールティッシュを厚さ1cm位のもの1個しか置かない。節約のためか習慣なのか。冷房は何処も完備しているが、異常な暑さになると能力不足のためか、或いはこれも節約のためか十分でなかった。但し会社の総務の人経由でクレームしてやっと改善された。
武漢科学技術大学
冶金・機能材料関係の助手以上の研究者30名程の聴講者。こちらではよりアカデミックな部分に重点を置き話す。IT関係はバッチリしている。
こちらもみな若い。副学院長も出席してくれたが、この方も40代半ば位。学生数1万数千人というのでキャンバスも広い。
アテンドしてくれた教授と一緒に歩いていたら、教授の同僚何人かとあったが、その中の一人に30代半ば位と思われる美人の女性がいた。聞けばこの方主任教授だという。大変賢こそうな娘を連れていた。一人っ子政策が行き届いており、子供達の教育には皆さん相当熱心な様子が伺えた。
レクチャーへの質問はここでは出なかった。
車・交通事情
市街地は何処も車があふれ、交通渋滞は日本と同じかそれ以上。道幅は概して広いが、車線を引いていない所が多く、渋滞場所では車が無茶苦茶に入り乱れて動いている。よくこれで接触事故を起こさないと感心する。このような交通マナーの悪さはラテン系特徴のものかと思っていたら中国もそうだった。路面は全般的に良くない。いわゆる補修が十分でなくデコボコがひどい。高速道路網は結構発達しているが、これも質は決して良くない。
走行している車には大きな特徴がある。即ち、武漢ではフランス車(シトロエン、ルノー)が圧倒的(8割位?)、上海ではドイツ車(WV)が半分位、残り半分が米、英、仏、日本車という感じ。いわゆる日本車が非常に少ない。私も方々の国を歩いたが、これほど日本車の少ない国(都市?)ははじめて。北京はどうなのかぜひ知りたい。
上海では市街地から空港までの交通機関にリニアモーターカーを使用していると聞いていたので、ぜひ乗ってみたかったが、今回はチャンスが無かった。
せめて走っているところだけでも見たいと思い、高速道路を走行中ずっと併設されている軌道を睨んでいたが、空港直前でやっと走行しているところに出合わせた。しかし期待した300km/hr程度のものでなく、60km/hr程度のごくありふれたもの。このリニアモーターカーも確かドイツ製だったと思う。