イエナからベルリンへ |
梅垣 高士
ドイツ東部の鉄道の旅(V)
イエナに来て4日目、シンポジウム3日目の7月12日は、ドイツに出かけることを決めた時から、ベルリンへ行ってみたいと思っていました。何人か誘ったのですが、一緒に行く人はなく、また、単独行となりました。朝食もそこそこに、9時ちょっと前のICEで、イエナを出発。ベルリン市内の中心部に最も便利な動物園駅(Berlin Zoologischer Garten)に12時15分前くらいに到着。
観光バスに乗る積りが、正規のコースを回ると時間がかかって、帰りが少し心配になりましたので、路線バスで、ポツダム広場までいって、ブランデンブルグ門を徒歩で往復することに方針を変更。日本と全く同じような感じの駅前のバスセンターの中で、何とか、ポツダム広場方面行きのバス乗り場を見つけ出しました。2ユーロ10セントで、2時間以内、乗り換え自由、乗り放題。
駅からバス15分くらいで、ポツダム広場へ。壁消滅後のベルリンあるいはドイツを象徴する場所の再開発の様子を一度見てみたいと思っていました。首都機能が移転しており、現在も、世界の企業が競って、展示場や高層の社屋を建設中です。ソニーが広場の中心的な場所に大きくスペースをとって、存在感を示していました。ソニーの隣に、ベルリンフィルのホールであるフィルハーモニアがあり、ホールに面した通りの一つがヘルベルト・フォン・カラヤンと名づけられていました。
ポツダム広場の中心から真北500mくらいにブランデンブルグ門があります。門に近づくと、T シャツを売る露店なんかが現れ、平日というのにかなりの人出でした。門は、通常ならば、その下を車も通っているはずなのですが、生憎、修理中で、全体に工事用シートが掛けられていて、隠れている部分がこうなってますとばかり、シートの上に実物大の絵がかいてありました。その真ん中あたりに人が3−4人ようやくすれ違えるほどの小さな通路が作ってあって、門の下を通り抜けることが出来ました。門は、壁の東側にあって、東西の境界ではなかったし、私自身は、壁があった時の様子は知らないわけですが、混雑する観光客に混じって、その通路を西から東に通り抜けて、壁の消滅とドイツの統一を実感してきました。門の東側、ウンターデンリンデンの道路の両側は、まだ、古い建物もあり、壁消滅前の旧東ドイツの雰囲気が若干残っているように感じられました。門の直ぐ近くにある威風堂々たる国会議事堂にもいってきましたが、ここも、観光客で溢れていました。
帰りのInter Regio(IR)(地域間急行とでもいうのでしょうか。)は、自転車を沢山つんで、若者たちでかなり混んでいました。列車によっては、自転車運搬可で、駅のホームまでどんどん自転車で走ってきます。
Deutsche Bahn (DB)には、いろいろなタイプの急行、特急があり、前出のInter City Express(ICE)は、車両が最新で、空調付、日本の新幹線より、小型。停車駅の到着時刻、開閉するドアが右か左かの電光掲示があって、車内アナウンスを聞くよりはわかりますので、大変助かりました。IRの方は、いかにもローカル線の急行の感じで、古くて、空調も電光掲示もなし。私の乗ったICE、IRはいずれも、平均時速100km前後で、最高は160kmくらいです。ドイツ東部では、時速250kmの特急は走っていません。国の間を走る急行(Euro City)もあり、私が帰りの急行を待っていたベルリンのホームから、アムステルダム行きの夜行列車が出て行きました。
意外なことに、私の乗った範囲では、DBの列車の運行は、JRよりも不正確で、20−30分遅れることも珍しくありませんでした。幹線は、大都市を中心に放射状に延びており、放射線と放射線を結ぶ横の線もあり、かなり、複雑なネットワークになっています。あまりいい表現じゃありませんが、蜘蛛の巣状といった感じです。単線部分がかなりありますし、遅れると連絡する列車が待ったりしますので、遅れが少しずつ広い範囲に波及していくのかもしれません。
ベルリンの行き帰りは、同じ経路を往復したのではないことは確かなのですが、どのようなところを通ったのか後で調べてみてもはっきりしません。ベルリンの帰りは、ライプチッヒを通らず、その近くのハレという駅に停まったのを憶えています。ここは、ヘンデルの故郷なのです。
日本の電車と違って一番戸惑うのは、乗り降りの際、車両のドアの開閉が、乗客に任されていることです。停車後、ロックが解放されても、ドアが開かないのは、冬場に、出来る限り寒気が入ることを避けるためかもしれません。ICEの場合は、ボタン操作により電気的に開閉出来ますのでまだしも、車両によっては、ロックが解放されるタイミングを見計らって、手で、ノブを回して、えいっとばかりに力をいれてドアを開かなければなりません。というのも、このドアは、乗降用のステップまで付いていて、かなり重いのです。お歳を召した女性なんかだと大丈夫かなと思うほどです。
目的地が近くなると、停車駅の車内アナウンスを聞き逃さないようにすることと降りるときのドアの開閉のことで、いつも、少し緊張しました。