高田征幸


先般行われた才萩会の集いの折に、遠藤君から奨められて、平成二十四年を終えるに当たり、一文を書き残しておきたく筆をとった次第である。

今年になって実現した新日鉄と住友金属の合併に、図らずも十二年前に関与していたことである。

新日鉄化学のロックウール事業会社の建て直しを厳命されて社長に就任し、様々な方策を実行する中の一つに、製品の陥没価格を戻す対策に取り組み、自社の製造プラントの一部を止めて、住友金属のそれと事業統合することを考え、自社の常務H氏の猛烈な反対を押し切って、両社で「日本ロックウール(株)」を立ち上げたことである。

当時の新日鉄にすれば、子会社(新日鉄化学)の中のさらに小さな事業であることから、巨象の足に刺さったトゲのようなもの、住友金属と特に親密な印象を他に与えることは困ると叱られたことがあった。

数年後に新日鉄化学はタールケミカル事業を、新日鉄はステンレス事業を統合し、まさに本業の合併になることを知ったのは社長退任後である。

また愉快なことは事業統合の交渉相手となった、当時の住友金属の新事業部長のT氏はその後住友金属の社長まで登り、今回の合併で新会社・新日鉄住金の社長になったことである。

決して先見の明があったとは言い難く、単なる偶然の所作を喜んでいるのであるが、この世には予想しえないことが起こることであり、そのひとときに出会えたことを痛快に思うものである。

近年になり、ゴルフも中退し、自家用車も止めて人生の楽しみが少なくなりつつある中、捨てる神あれば拾う神ありで、楽しいことが新しくどんどん見つかるものである。

十年以上前に高校(仙台二校)の恩師T氏と二人だけで長い時間酒を酌み交わしていた時に「人間は何で生きているのか?」と質問されて凡庸な私には窮余の一答で「人生を楽しむことです。」と応じたことがある。恩師は三年前になくなられたが、最近ますますその意を強くしているところである。

「人生を楽しむためにテーマを探し、テーマを創り、テーマを替え、新しい仲間をつくることである。」正に残り短くなった人生を楽しみ、痛快なひとときにしたいものである。