佐藤英二
一時期、ワインの晩酌まですることがあった。世の中にこんなに美味しいものがあって良いのだろうか、と思った10数年前のことである。しかし、ここ一・二年はアルコールにまったく身体が対応しなくなった。缶ビール半分とワインをグラス一杯で翌日は頭痛でまったくの死体である。それでも一時期は、“カンパイメイト”という代物に大分助けてもらったが、何時の間にか市場から消えてもう二・三年になるだろうか。
それが、大変嬉しいニュースが飛び込んできた。“カンパイメイト”が名を変えて市場に再登場と言うのである。その名は、「アミノバイタル 乾杯いきいき」。実際に市場に出回るのは来春のことらしいが、幸いインターネットでの通信販売を始めてくれた。(ご興味がおありの方は、http://www.aminovital.com/dailycare/ で求められます。)先週月曜日にこの情報を得、入手できたのが木曜日の14日。15日の才萩会が新製品のトライアルの日であった。結果は、週末に大事な予定がありアルコールの摂取を幾分控えたこともあろうが、何時もなら飲酒後2時間で帰りの電車では頭を抱える状況は何処へやら、翌日もまったくの正常な一日でした。おそらく、大いに効いてくれたのでしょう。
さて、この「アミノバイタル 乾杯いきいき」の中身の話。中身はきわめて単純で、二種のアミノ酸、アラニンとグルタミン(Ala−Gln)だけである。もちろん商品では飲み易くするため、甘味料、酸味料、香料が添加されてはいるが。
この商品の開発の過程が面白いのでご紹介しよう。
ねずみ(ラット)に水の代わりに5%のエタノール水溶液を与えると、しばらくして体毛のツヤがなくなり、一部は脱毛し、相当に悲惨な姿を呈してくる。そして、6ヶ月ほどで肝硬変を起こして死んでしまう。一方、5%エタノール水溶液の投与で悲惨な姿になりかけたねずみに、15種ほどのアミノ酸の水溶液(あらかじめ別の試験で好んで摂取される濃度を調べておく)をビンに入れて同時に与え、自由に選択が出来るようにしておく。すると、数日してある限られたアミノ酸(Ala−Gln)を好んで摂取し、何時の間にか白くきれいなツヤのある体毛が生えてケージの中を飛び回るようになった。もちろん6ヶ月で死亡することもなくなった。
その後、別の試験として、水と5%のエタノール水溶液を並列して与え(自由選択)、同時に複数のアミノ酸水溶液を投与した。結果は、水より5%のエタノール水溶液を好んで選び、グルタミンとアラニンの摂取を続けた。もちろん体調はすこぶる好調と見受けた。アルコールは本来好まれる飲み物のようである。
これが、「アミノバイタル 乾杯いきいき」開発の経緯である。アラニンとグルタミンの比率は、もちろんねずみが決めてくれた比率にしてある由。
つぎに、効いているとしたらどのような機構が考えられるのか?ご興味がおありの方も多いと思うので、開発に携わった研究者の追加情報を紹介しよう。アルコールの代謝(酸化)の過程で過量に生成したNADHを消費しアルコール代謝を促進したことによる。これは、NAD/NADH比を反映する血中アセト酢酸/β‐ヒドロキシ酪酸の比がアルコール摂取で大きく下がるのに対し、Ala−Gln投与ではNAD/NADH比が正常値の範囲に保たれていた。
また、Ala−Glnは肝再生を促進し急性肝障害をも改善することが知られている由。
これで、ワインの美味しさを思い出せるかもしれない。
最後に、これを開発した研究者がよく口にする言葉を一つ。“ねずみはうそを言わない!”