表題
サカタン

「なんちょって暮していると、情報の入口は専ら目です。

ということで、今年も目の保養に国立新美術館の国展(国画会)に行ってきました。

と書けば、皆さんのご想像通り、「ハリー老公版画部門でまたまたまた入選」です。

多勢の会員、凖会員、会友に伍しての数少ない一般応募入選者のひとり、しかもここ数年毎年入選の常連、すっかり指定席を確保した感があります。

というのは、「目を惹いてやろう」という魂胆見え見えの百数十点の展示作品の中で、老公の作品は群を抜いて地味で「渋い」んです。「わびさびの境地」とでも言うんでしょうか、診査員としてはこの独特の「渋さ」が棄て難くて、今年も老公のために席を空けたのだろうと想像されます。

題は「天空は晴 石垣に風」。天空の城竹田城趾がモチーフかと思われる。灰色の石垣群に支えられ複雑な形状に畳まれ積み上げられた黄土色の平面、その頂きに数本の緑の樹木、見えない後側は絶壁を想像させる。背景は青空と薄雲。

石垣の石は角が欠け凸凹な面が陰影の模様を造り出している。土の平面も緩やかな丸みを帯び風雨に叩かれてきた歳月を感じる。

色彩はと言えば、全体に灰色のシャドウがかかったようにくすんでおり、鮮やかな色を与えられたものは一片もない。「天空は晴」といいながら、その晴れ間も青を帯びた灰色である。いや、灰色というのではなく「にび色」と形容すべきなのかもしれない。

「風」はあるかと窺えば、樹木の姿、雲の動きからすれば緩やかな風であろう。昨年に続き、老公はかつて栄えた構築物の廃墟を更に遠い将来の心証風景として描き、愛おしんでいるように思える。

下手な描写をすれば斯くの如くですが、近いうちに老公本人が作品を投稿してくれるでしょう。つまり、この拙文は催促を兼ねた前口上と思し召しご容赦ください。よって、作品の写真は添付しません。


蛇足ですが、今年の「写真部」では、80周年記念とかで全国の小中高の学生の作品が200点前後展示されていました。どれも日常的な身の廻りの人物や動物などをけれん味なく素直に写し、感動を直接的に伝える題名を付けていて楽しく鑑賞できました。

国展1

次に「大人の作品」を観たところ、天然自然の物が主題であっても光の当たり方を一捻りも二捻りもしたような造形も多く、題名がまた抽象的観念的で凝っており、芸術家とは素直でない人種だなとつくづく感じた次第です。」

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