サカタン

今回は母親の介護につき、健康管理面、ただし既に触れた精神面と痛みの関係を除いて書いてみます。

介護開始後にそれぞれ約1ヶ月の入院が3回ありました。

初回は意識を失ったため脳梗塞の再発と思い込み救急車で搬送したところ、低Na血症との診断でした。

その時、低Na血症で意識を失うことはないと言われ意外に感じましたが、その後何回か通所(デイケア)先と自宅で一時的に意識を失ったことがあります。

暫く休ませていると回復するので、食後など脳への血流が少なくなったための一時的な現象と我流で解釈し、慌てないことにしました。

同様な現象が体温と血圧でも見られました。急に体温が上がったり、血圧が上がったり、下がったりするのです。

初めは、暫くすると回復したものの、心配ですから医師に見せましたが、「治まった後連れてきても分りません。肺や血液に異常はありません。」とのことでした。

これも高齢者によく見られるコントロール不調ということに自己判断(医師や看護師は責任が伴いますから、不用意な断言はしません)して、医師に「こうなったら使いなさい」と体温や血圧の高さと継続時間の限度を指示してもらった上で、解熱剤と降圧剤の常備薬を出してもらうことで対処した結果、ゼロではありませんが殆ど使わずにすみました。

だるいなどと気分が悪いことを訴えることが数多くありましたが、前記の体温や血圧不安定な場合も含めて、熱中症や下痢などの脱水症状対策に使われる補水液OS-1を飲ませると不思議なくらい落ち着きました。

高齢者は暑くなくても熱中症に罹り易いと言われますが、そんな要因もあったと思われます。水分と電解質、ブドウ糖の補給を兼ねており、即効性があって、我が家では使用頻度の高い不可欠の常備品になりました。多分、心理的な効果もあったのではないかと思います。

残り2回の入院は数ヶ月間隔の肺炎でした。かつては一生に一回、或いは10年位は持続すると言われていた肺炎球菌ワクチンの効果が6年にして切れたかと感じ、再度接種したところ、以後はピタリと罹患しなくなりました。近年、予防接種法で5歳刻みで肺炎球菌ワクチンの補助がされるようになりましたが、是非受けるべきだと思います。

継続的に処方されていた医薬は、内服薬、貼付薬、塗布薬を含めて、内科、脳神経外科、整形外科、皮膚科、精神科、眼科からの合計13種類に達していました。薬の多さに吃驚でしょうが、前回までに書いた医薬に加え、脳梗塞と狭心症の再発防止、気道拡張剤、消化剤、睡眠導入剤、おむつでの皮膚炎治療薬、ドライアイ対策など、いずれも意味があり、公的負担を考えると気が引けるところではありますが、無駄な薬があったとは思っていません。いずれも最少用量か、その半量でした。睡眠導入剤は半錠を毎夜11時に飲ませて眠らせました。

売薬ではビタミンB2B6剤が実に役立ちました。それまで頻繁に起きていた口内炎、口角炎がぴたっと出なくなったのです。かゆみ止めの塗り薬も欠かせませんでした。

週2回の訪問リハビリは柔軟性や筋力だけでなく、内臓機能まで効果が大きかったと考えられます。足のむくみも一時気になったのですが治まりました。

足の親指の巻き爪が運動(爪への圧力)不足と爪の切り方に影響されることも初めて知りました。

最後に終末期のことですが、亡くなる2ケ月前に訪問看護師から、「もう何時亡くなるか分りませんよ。訪問医師を契約しておかないと、家で死亡したら警察沙汰になりますよ。」と言われ、「えっ、あと数年は生きると思ってました。」と言い返しましたが、言われた通りにして正解でした。

食事中気を失って昏睡状態になり血中酸素が70%に落ちて、医師から「今夜が限度」と言われた数時間後、身内の大声に反応して喋るようになって医師を驚かせたものの、6日経って突然目の前で息が止まりました。この間、時々痰の吸引はしたものの、ひどく苦しんだという印象はありません。心臓マッサージという手もあったのでしょうが、その発想は湧きませんでした。死亡診断書は「老衰」でした。

身体の自由が利かなくなってから、「情けない、早くお迎えが来て欲しい」と時々言っていましたが、命に係る病気はないんだから当分閻魔様の呼出しはこないよ、とか言って宥めていました。

私も精神的なストレスを貯めないように、予め「怒りたい時は怒るよ。大噴火して首を締めたりしないように、時々小噴火するからね」と常々言い聞かせて、その通りに怒ったり謝ったりしながら介護してきたので、本人も理解してくれていたと思います。

しかし、何度か礼は言われていたものの、本音で満足できる最期だったのかどうかは分りません。私のやりかたが我流で間違っていたのか、自宅介護より施設に入れた方が正解であったのか、長生きさせ過ぎてしまったのか等々疑問は残りますが、ぐたぐた考えても詮ない過去の事と割り切っています。

皆さんの殆どにとっては親の介護は過去のことでしょうから、私が書いてきたことは今更の感があり目障りだったかも知れません。間近に迫った「自分の被介護の時」のための備忘録も兼ねて書き連ねてみた次第ですのでご容赦ください。くどくどしい長話にお付合いいただき有難うございました。