サカタン

先ず食事ですが、要介護になって最初に血液検査で気付かされたのは低Na血症で、高齢者は一般に代謝機能の低下があるところへ、普段からの減塩のやり過ぎが重なったためのようです。

次に出た問題は、それまで普通食で支障なかったところ、ある日の食事中から突然米飯などのやや固い食物が呑込めなくなりました。原因は消化器内科、耳鼻咽喉科でも不明で、精神的なものだろうとの診断でした。これ以後、例えば絹豆腐は食べられるが木綿は食べられないというような工合で、喉ごしの悪いものを受け付けなくなり、食品の選別を強いられることになりました。

同時並行ですが、栄養管理の不備に気がつき、本人の好みを容れて試行錯誤した結果、表のような基本の食事(1日量)に落ちつきました。

これは基礎代謝ぎりぎりのカロリーで、これでよいのか自信がなかったのですが、ともかく体重が殆ど43±1kgの範囲で落着くことになりました。体重に注意する意味は、増えれば膝痛に響き、減れば筋肉の減少を意味するからでもあります。

人参は予めスライスして圧力鍋で柔らかく煮てから細かく刻み、煮汁も使って雑炊に仕立てました。

冷食の肉団子も、各社各種の商品の中で最もきめ細かで喉ごし、味ともに気に入ったものが選ばれました。私がプロセッサーを使って念入りに作ったものはあえなく落選しました。この過程で加工食品も悪くないなと感じたことは、手作りに比し成分・量と味のばらつきがなく断然安定していることです。

但し、レトルト介護食は次々と試しましたが、気に入ったものはなく定着しませんでした。

毎日同じ食事で飽きるだろうと思いきや、本人には苦にならなかったようで、これに時々好きそうなものを少量足す程度で済んで(済まして?)います。

精神状態が不安定な時など、食事を受付けない場合もありましたが、この際はアイスクリームが何日も連続で大活躍しました。シュークリームとバナナはショートリリーフとしても有用でした。

なお、食欲の安定には、精神科医が出し続けてくれた漢方薬(ツムラ補中益気湯エキス顆粒)が卓効を示したとの印象を持っています。

ベッドに寝かせ放しにしておくと足腰の筋肉だけでなく内臓機能まで衰えるので、つとめて車椅子で過させましたが、特に食事は誤嚥の危険を避けるため絶対にベッドでは与えませんでした。毎食後の歯磨きも誤嚥防止上必須でした。ただし、水、スポーツ飲料は食事以外で最低1日1000mlを目標にしていましたので、ベッドでも摂らせました。

終末期近くでは自分で飲食できなくなりましたが、食事の基本は変えていません。この段階で驚いたのは、液体ものが固形物に比べて格段に嚥下に時間を要するようになったことで、そのためもあって、食事と薬の服用が終わるのに一食当り2時間近くが必要になりました。勿論、咽せるようになってからは液ものの粘度を上げました。細かい話ですが、液ものを口に入れてやるには、百円ショップにあるプラスチックのレンゲが深い割りに肉薄で口に入れてやりやすく便利でした。

排泄は、運動能力の推移にしたがって、常設のトイレ、ポータブルトイレ、おむつ、を使い分ける必要がありました。おむつ以前は紙パンツ常用です。

食事と違って、排泄は不定時で介助に力が必要です。夜間が問題ですが、当初は使命感に燃えて昼間並みに介助していたところ、介護する方が参ってしまい、降参しておむつに変更しました。

おむつは尿にして12時間対応位まで、肌触り(さらさら感)を維持できるパッドが市販されるようになってきており、排便が昼間で安定していれば、介護者は充分睡眠を確保できますし本人も楽なようです。幸なことに、当方の母の場合、元は便秘-緩下剤-下痢-便秘を繰り返していたのが、表の食事が定着した後では、排泄しやすい柔らかさの便で安定し、昼間で規則的になりました。

ポータブルトイレは本人の移動の苦労は少ないのですが、洗浄機能がないため不衛生になりやすく、膀胱炎を年に数回も発したので、常設のトイレに支えて歩かせたり車椅子を使ったりして連れてゆき洗浄するように変更して膀胱炎を退治しました。しかし、トイレも我慢が利かなくなって失敗の頻度がどんどん上がってゆき、更には洗浄水が何処に当たっているのかも分らなくなってきましたので、最後には24時間おむつに変えざるをえなくなりました。

おむつ等の実務にはコツがありますが省略します。

次回は、精神、痛み以外の健康関係に触れて、締めくくりたいと思います。