サカタン

前回は介護経験のうち精神面につき書きましたが、今回は精神面とも関連する脚腰の痛みから始めます。

母親が要介護になったのは腰椎の圧迫骨折ですが、強い痛みで呻いていました。整形外科を売りにしている病院の院長から退院時に「不斉形な潰れ方で神経を刺激するので痛みと同居は覚悟してください」と宣告されました。

処方された鎮痛剤は飲み薬、貼り薬ともさっぱり効きません。コルセット(痛みの緩和より骨折の伝播防止が狙い)を作らされましたが、固い縁で圧迫されて苦しいと、間もなく外し放しになりました。

圧迫骨折に気付かない程痛みのない人もいるようですが何とも残念です。

あれこれ調べてみたところ痛みというのは個人差があり、私流のラフな言い方をすれば「呑気な人は痛みを感じにくく、神経質な人は感じ易い」「慢性痛には鬱病が隠れていることがある(仮面鬱病)」というようなことが分りました。

ご存知の方もいると思いますが、数年前、整形外科学会と腰痛学会が慢性腰痛の過半は精神的ストレスが主因だという治療指針を発表しています。

私の母親は若い頃からの超神経質人間、おまけに現在は鬱状態だから痛みには弱い筈だと納得し、ペインクリニックに通い始めました。クリニックでは抗鬱剤を服用していることを確認し、加えて神経ブロックを施しました。

この療法を素人的に言ってみれば、炎症が治まってきても思い込みで相変わらず「大変だ大変だ!」という信号を脳に送り続けている神経回路を一時麻酔で遮断し、「あれっ?炎症は消えてたんだ」と、信号を送り続けるのを止める気にさせるもので、毎週 1 回計 13 回通ったところ、やや楽になりました。

しかし、痛みから解放された訳ではなく諦めていたところ、ある訪問看護師さんが「リリカ」という薬もあると教えてくれました。調べてみたら慢性痛に効くとのこと、早速整形外科の医師に話したところ、直ぐに出してくれました。

この薬は数週間かけて徐々に効いてくるのですが、結果的に大成功、強い痛みを訴えなくなりました。

口惜しかったのは、こちらから言い出すまで何年も処方してくれなかったことです。聞けば同じ時に通院している患者さんは以前から出してもらっているとのことです。整形外科医という人種は患者の痛みに鈍感で、具体的な要求をしなければ動かないのかな、或いは超高齢者(自分自身と区別するために“超”をつけています(笑))には不熱心なのかなと考えた次第です。

驚くなかれ、最終的にこの病院から出してもらっていた薬はリリカ、ビタミン D 剤、ビスフォスフォネート剤の 3 種とも、私が請求してから出たものになっていました。

ともかく、紆余曲折の末、小康を得て歩行練習が捗り、要介護 3 から出発したものが、一旦は要介護 2 に改善され、散歩もできるようになりました。

しかし、約 2 年後、それがまた要介護 4 に転落しました。これは急性の背筋痛がきっかけでしたが、以後は痛みではなく筋力不足で自力歩行ができなくなりました。つまり、超高齢者はベッドで臥ていると、急速に筋肉が衰えるということです。

膝を支える筋肉の衰えで、60 歳代からの変形性関節炎(それでも 88 歳までは日本舞踊やダンスを楽しんでいた)の痛みが酷くなりました。立つと右膝の摩擦音がガリガリ身体を伝わると言っていました。この段階では痛みの主役が腰から膝に替わっています。

筋力の維持のため、ベッドの上で、脚揚げ 10 秒と尻揚げ 10 秒を各 10 回、上体起し(へそ覗き)を 10 回というような運動を毎日 20 分位号令をかけてやらせました。動物性蛋白質も意識的に補給しました。結果は多少は効果があったのかなという程度で、比較の対象がないので自信はありません。

経験者がいると思いますが、ヒアルロン酸 Na の注入にも、亡くなる数ヶ月前まで1年間ほど 2 週間間隔で通いました。痛みが緩和される効果は明らかですが、徐々に消失するようで、10日前後で痛みがぶり返しました。

最後に分ったのですが、若手の医師が自発的に使ってくれた、帝人ファーマのヒアルロン酸Na架橋体製剤の持続性は、分子量が大きいだけに素晴らしく、何故か年 3 回の制限がありましたが、数ヶ月保つ感じでした。皆さんにも有用な情報だと思います。

次に、介護保険制度の利用につき簡単に書きます。

母が痛みで唸り、頭がおかしい状態で退院してきたので、慌てて近くの老人施設に相談したところ、迅速に介護認定手続をしてくれました。認定まで数ヶ月かかりましたが、遡及適用されました。等級は、3 が 2 年半、2 が 2 年、4 が 3 年の計 7 年半です。

利用したサービスは、先ず訪問看護、車椅子での病院送迎、次にデイ・ケア(個人別リハビリ 20 分付きのデイ・サービス)、要介護 4 になって通所できなくなってからは、訪問リハビリと訪問入浴を加えました。

機材のレンタルは電動ベッド等、設備改善費補助は浴室の改造に利用しました。

これらはケア・マネージャーとの相談で決めたことですが、特に訪問看護師の提言が、介護と医療をカバーし常に的を射ていて、たいへん有用でした。

デイ・ケアは得意な折紙を教えるようになるなど、他人との交流で、精神面での効果が顕著だったと感じました。

今回はここまでにして、次回は食事、排泄関係に触れたいと思います。冗長さはご容赦ください。