駄弁:「専業主婦の家事労働の価値について」

酒井孝真

金井君が主婦労働の評価を年百万円と表明してから、このサイト上や三水会でいろいろな意見が出されました。

その後議論は途絶えておりますが、インターネット上で調べてみたところ、主婦労働ないし家事労働については実にさまざまな議論や評価がなされていますので、若干タイミングがずれてはおりますが、紹介かたがた駄弁を弄してみようと思います。

@http://allabout.co.jp/contents/aam_lifeevent_c/worldnews/CU20060505A/index/
には、アメリカ就職支援サイトSalary.comが作成した専業・兼業主婦の労働価値の試算ページの解説があります。家内労働のために人を雇えばどのくらいかかるかという見地からの計算です。

家内労働のために人を雇えばどのくらいかかるかという見地からの計算です。この計算方式によるアメリカの平均的専業主婦の労働価値は邦貨1,200万円/年とのことで一時話題となりました(以上、金井君も引用)。

家事労働を構成する10職種毎の時給が出ているので、それぞれに対応する時間との積算から計算できるのですが、仮に時給が洗濯人に次いで最低から2番目のハウスキーパー(専門的な仕事はしないお手伝いさん)の時給9.62ドル(104/ドルで丁度1,000円)をとり、労働時間8時間/日、年365日としてみますと、年額が292万円となります。

当然ながら、ここで言うお手伝いさんは、看病は業務ではありませんので、旦那が病気していても優しい言葉ひとつかけずにさっさと帰ってしまいます。

Ahttp://www6.ocn.ne.jp/~house/work/によれば、会社勤めの経験のある女性へのアンケートに基づく主婦の家事労働の評価額は時給1,057円となっていますから、同じく労働時間8時間/日とすれば310万円弱となります。

8時間/日の妥当性についてですが、私が家事をやったとして、食事の準備・後始末・台所まわりのメンテナンスで3時間、屋内の掃除・洗濯・アイロンかけで1時間、買物その他の外出を伴う雑用で1時間、庭の手入れ・外廻りの掃除1時間、主なルーティンワークをざっと数えても6時間程度になりますから、子育てを卒業した主婦でも、ある程度丁寧な作業をする人なら、労働時間が8時間程度に積み上がるのは間違いないところだと思います。

Bhttp://www5.cao.go.jp/98/g/19981105g-unpaid.htmlには、経済企画庁が平成10年に出した「1,996年の無償労働の貨幣価値」という表(下に図示)がありますが、これは実質的に家事労働に従事したことによって、収入を得る仕事につけなかったことによる機会損失額を評価したものです。

これから見ると、65歳前後の専業主婦(無業)の労働価値は240万円前後と読取れます。

(ローカル版としては、同様な試算を茨城県が平成3年に発表したことがあります。)

以上からすると、65歳前後の専業主婦の家内労働の価値としては、代替労働者の雇用額から言えば年300万円程度が熟練度、柔軟性、機動性、献身性、全て抜きの最低相場であって、年令も考慮した機会損失額から言うと240万円程度かなと考えられます。

もっとも、家事労働の受益者は家族全体、その負担は夫婦の共同責任ですから、つまり、夫が妻に払うべき賃金に相当する金額は労働価値の半分の150万円ないし120万円になります。ここまで来ると、どういう訳か金井君の言う「支払い可能額」に近い線になっています。

さて、しかし、仮に旦那の所得額が1,000万円だったとして、奥さんに家事労働評価額を支払えば、後は自分の財産という訳にはゆきませんわね。

主婦の家事労働の評価額と財産形成への寄与度というのは全く違う次元の議論のようです。

遠藤君のグループのメンバーのご婦人たちの「所得折半」に近い主張は後者の論理から来ていると思われます。

以上、駄弁でした。