表題
老老ハリー

国展入選版画「若い神子畑ー今」

国展入選版画「若い神子畑ー今」

今までかかわってきた地方をふりかえり、少し思いなどを述べます。

例えば、筆者などにはほとんど経験のない外国旅行なんぞについて一席述べるのは面白みや新鮮さや含蓄の濃さなど計り知れないものが有るのでしょうが、本州から離れて生活した経験もないあたくしには及びもつかない。

ただし、時には しばしば あたくしの人生は陛下がお住いになっている島の地面から離れることなどなかったなどととりとめもないことを口走るのをお許しください。

で、兵庫県のことを話します。ご同輩各位にあってはたぶん兵庫県に生まれたり、育ったり、住んだりした方はあまりおられないのではないでしょうか。

長い間、あたくしの知識では神戸があって、淡路島があって、城崎温泉があって・・でお終い(に近い)でありました。

仙台から大阪の職場にかわり最初の寮が宝塚にあったことから兵庫県に関りができ始めました。

この時期1度だけ同期入社の友人宅に行った時には広い芝生の庭の一角に鯉を飼っている池があり、声を掛けながら餌やりなんどをしているのを見て『これが世にいう芦屋の生活というもんだ』と納得した。

鯉などというのは沼かなんかで釣り上げて、おいしくいただくものとばかり思っていたもので。『このウチでは、あんまり鯉など食わないのではないか』という推測は異文化から受けた衝撃というものでありました。

数十年後、あたくしの職業とは全く関係のない友人ができ、お陰で大兵庫県について新たな知見ができたのです。

  1. 全国の農地で共通のものなのでしょうが、近頃の農業には悩みが続いていて先が見えない。

    上の友人の家は今でこそ大阪住まいですが、学生の時までは代々続いた農村の田畑持ち。もちろん代が変わった今でも田畑持ち。

    俺は米も野菜も要らねーよと思っても耕地を放任して草・虫だらけにしておくと村八分。思いあまって、役所に全田畑を(もちろん無償で)寄付をしたい旨伝えたが役所もその後のヤリ方に思案がおよばずOUT。

    今では、近所の人を雇って迷惑をかけない程度のことをやっているらしいがいっぱいできた米や野菜はどないしているんかなー。

    あのあたりの地区はナンヤラ農業特区に指定されたとの噂が飛び交っていたけれど、タオルの産地に新設校を作ることなどより難問が山積みしているらしく前向きな話題は聞きません。

  2. 今日の本題である景観遺産のこと ――特に、竹田城址と神子(みこ)畑(ばた)銅精錬所跡のこと――ただし、時代背景や登場人物、歴史的な価値などはさて置き(ずっと置きっぱなしにして)今そこに行って見たらどんなモンかというだけに絞ってお話します。

    • 竹田城址・・朝来市・・ 

      お城となると弘前城、大阪城、熊本城などがお好きだという方にはお勧めできない。歩いていて危険ではない程度の道が続いるだけで、登って行くと崩れるのをやっと耐えているような漠とした城壁跡の石垣の連なりがいくつかある。

      大阪城の石は、瀬戸内の島からも運んできたそうで、でかさや悠然とした色合いで仮に天守閣など見なくてもなんか立派なお城だという納得できるたたずまいだけれど、ここの鉄錆色の石は自分の城下町のそこそこのものを集めて積みこんだように見え、ありがたそうな色とはとても言えない。

      てっぺんまで行ってみても水飲み場・トイレなどはない。石垣は崩れるに任せているわけではないが、でかいとは言いにくい石が少々積んであるだけで建物の跡形があるわけでなく、頂上の城跡メインの箇所は、一回りするだけならとても30分はかからない。

      高い所だけあって周囲は普通の山に囲まれている。重厚さなどない、悲壮感などない、いつだれが建ていつ滅び、栄華・没落のストーリーも分からないと、近頃こんな所がどうして思いもかけない人気がでたのかと不思議ではありませんか。

      その不思議を解決できる腕前はないのですが、あたくしは1度行ってあまりにもすばらしかったので2度も行く羽目になりました。(3度、4度と行かなかった理由:あまりにも人気が出たので入山料を取るようになった。あたくしはそれ以後行かない)噂では、この城の遠景も素晴らしいとのことです。

      もともと、兵庫県はもとより中国地方の一帯は霧の景色を売り物にしている所が多く、ここ竹田城址の霧にうずもれた遠景も売りだそうです。(あたくしがお気に入りの竹田城址の霧景色を見に行かない理由:a.いつ霧が出るのか分からない b.どのあたりが遠景-ベストの場所かが分からない。)

      もし各位が城址に1度行って見ようと思ったら、大阪起点なら日帰りのバスツアーがあります。

      あのあたりで少し羽を広げようとしたら、ゴルフ・スキー・紅葉・日本海の蟹・温泉・コウノトリなどなど財布と足さえしっかりしていたら少しも困りません。(個人的なことを申し上げると、近頃のあたくしは上記の2点に事欠くようになりました。)

    • 本日のハイライト 神子(みこ)畑(ばた)銅精錬所・・朝来市・・

      ご覧になっている版画はこの精錬所跡メインの建屋です。まず、極近くまでアプローチできて当初も今も不動のシックナーなどに圧倒されるのですが近づけるのはここまでが限度で、旧プラント内にはナンカコネがないと立ち入れません。

      こういったコンクリートの塊は、鋼鉄製の機械などと違いかつて働いていた時でさえ動き回って音を立てたりしていたわけではない。

      だから、その中に当時のように生産物を孕んでいなくても(あたくしなどの外観だけにしか関心のない者には)まだ生きているような不気味さを感じさせる。神気迫る。平生心を奪う。よって、あたくしなどは口をアングリと開け、気を失わないように泡盛を流し込むのであります。

      近頃、軍艦島クルーズや石油プラントの見物ツアーが流行っているそうですがチョット似ているのかな?

      2・3年前、初めて行った台湾北部の海岸沿いにも放置された銅精錬プラントの塊を見たが、興奮と幸福とに包まれました。台湾では後で小籠包を食べ、至福の1日を閉じました。


次に本誌に投稿などできるのはいつかな?近頃大いに気力の衰えを感じているのでとても先のことなど・・・

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