東北大学工学研究科
奥脇昭嗣
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はじめに
容器包装リサイクル法(容リ法)により ’97年に4月に始まったペットボトルのリサイクルに加えて,2000年4月からはその本格的施行により,その他のプラスチックといわれる,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレンなどの熱可塑性プラスチックを主とする食品の容器・包装にかかる廃プラスチックのリサイクルが開始された.’97年における廃プラスチックの排出量は,産業系と一般廃棄物系共に,ほぼ450万tずつであった.産業廃棄物および一般廃棄物の排出量の比が4億t対5千万tであるのに比べると,廃プラスチックは,家庭を主とする一般廃棄物としての排出量の比が極めて大きい.
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廃プラスチックリサイクルの視点
社会的に最も重要視されているのは経済性であろう.私的便益を得ることのできる集積回路中の金などと違って,廃プラスチックの場合は,それを資源としてリサイクルすることによって,環境への負荷を減らして社会的に総便益を得ることを目的とする環境事業である.そのため,一般にいう,「もうかりまっか?」とたずねられても,文字どおり「ぼちぼちでんな」でなければ社会的には困るのである.石油や石炭などの工業原料と違って,廃プラスチックのような環境資源を用いて事業をする企業は,容リ法によって廃プラスチックを逆有償としてその処理費を受け取れなければ経営が成り立たない環境産業である.
環境の視点からは,その排出量が膨大であるからリサイクル,特にこれから大きくなる化学リサイクルに伴う非意図的化学物質の生成およびプラスチックの究極的利用形態であるエネルギ−回収したときの有害化学物質の発生および二酸化炭素による温暖化であろう.
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非意図的有害化物質の生成
産業系廃プラスチックは,容リ法の対象ではないから,それを排出する事業家は,基本的には最終処分か単純焼却か最も処理費用の安い適正処理方法を選択する.いまでも問題になっているが,最終処分は干潟や里山などの自然環境の破壊,安価な焼却によるダイオキシンの生成を抑制すべく,一般廃棄物については容リ法によってそのリサイクルを推進することになった.
焼却炉は,厳しい規制によって,既設の炉からの発生抑制が強化され,新設の大型焼却炉は,もとから廃棄物に含まれているダイオキシンの分解炉として機能するようになっている.含塩素系樹脂は,用途ごとにマテリアルリサイクルが進められているが,最後は焼却が中心となろう.産廃,一廃の枠を外して,大型焼却炉で最大限エネルギ−を回収しつつしっかりと発生を抑制すべきであろう.
分別された一般廃棄物中のその他のプラスチックも,ごく一部にはマテリアルリサイクルへの挑戦も見られる.しかし,アルミ箔などの異物が混じり,洗剤や調味料も付着し,塩素含有樹脂も含むなど常識的には困難である.この分野こそが化学リサイクルの出番である.ペットボトルの化学リサイクルは容リ法によって経済性は克服できそうであり,リサイクル製品の流通が当面の問題である.しかし,その他のプラスチックは含塩素樹脂を含むため,高温で熱処理する場合は,条件によって塩化水素と共にさまざまな有機塩素化合物が生成するため発生ガスの解析と適切な処理の研究が重要である.油化(新潟,札幌,三笠)プロセスでは,発生ガスの高温燃焼・急冷によるダイオキシンの抑制が図られている.高炉原料化,コ−クス炉原料化など脱塩素処理を含むプロセスにあっては,これからその大型化,普及が進むはずであり,非意図的有害化学物質の副生を最大限抑制する配慮が大切である.
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結び
地域のエネルギ−・素材産業の基盤を最大限生かして,技術と人を含めたシステムを効果的に組み合わせて,地域毎に廃プラスチックリサイクルの経済性向上を図り,有害化学物質および温暖化等の抑制を同時にみたすシステムの研究はますます重要になろう.