縄野 信一
先日、久しぶりに栃木、福島両県境の某渓流に入り岩魚を求めた。
渓流釣りは、約10年前単身赴任で長野県安曇野に在住の折に始め、未だ初心者である。以来、すっかりその魅力に取り付かれ、私の持病の様なものとなった。
私を虜にした渓流釣りの魅力は、いくつかある。
人里はなれた山奥の自然との触れ合い。
春は新緑、秋の紅葉。出会うのは、カモシカの親子連れや山猿の群れ。聞こえるのは、清流のせせらぎと野鳥の声。神秘なまでの渓谷の静寂と緊張感。
雪深く永い厳寒を生き延びる、岩魚の生命力とその容姿の美しさ。
それは、ある種の気品と艶やかさをもち、うら若き乙女の面影にも似ている。 岩陰にひっそり咲く、可憐な野草。生命の不思議さへの感動。獲物は、釣れても釣れなくともよい。
谷川沿いの秘湯の宿。現地の地酒と岩魚の塩焼きの香気。
偶然の同宿同好の仲間との出会い、大物捕獲の自慢話。
などなど、楽しみは尽きない。
当日の行程を簡潔にご紹介します。
9月6日(木) 夕刻6時、栃木県西那須野町着
当地も3年前に、単身赴任した所。現地の仲間3人と行き付けの蕎麦屋で落合う。懐かしい顔ぶれがそろう。
明日、同行する私の師匠と詳細打合わせ後、早めに就寝。師匠は黒磯在住41歳。北関東一帯の主な渓流は、我が庭先のように知り尽くす、釣り暦25年のベテラン。
翌朝5時、晴、標高約800m、『***川』上流に師匠のワゴン車で到着。
(川の名前は企業秘密のため、公表は師匠から禁止されている。)さらに上流へは獣道となり、車は入れない。装備を整え、登山開始。約2時間後、目的の渓流に入り、朝食。
川幅約7m、昨夜の雨で水量も豊富。水は手を切るように冷たい。
師匠と川の両側に別れる。ポイントを狙いながら、それぞれ上流に向う。約2時間、沢を登ったところで小休止。日頃運動不足の為、途中、岩場の滝登りには難儀した。
川幅は約3-5mに狭くなり、渓谷の様相は険しさをます。谷はさらに深く、両岸は垂直に聳え立つ岩壁と緑に被われる。空は見通せない。水の音と野鳥の鳴声。静寂あるのみ。
さらに、ポイントを求め、上流へ進む。途中の休息を含め、約3時間後、終了とする。(この辺は、土地感覚のあるベテランが付いてないと、一人では不安で登れません。)
釣果は、この川の特定流域にのみ生息し、腹周りが金色に輝く日光岩魚。師匠と二人で12匹、平均体長約20センチ。容姿、色合いが美しく、味と香りも一番良いサイズである。
(尚、師匠と小生のそれぞれの成果は、ご想像にお任せします)
午後4時、福島県桧枝岐、木賊温泉着。宿は老舗の井筒屋。
ゆっくりと岩風呂で疲れを癒す。酒は「会津ほまれ」、女将心尽くしの山菜料理と、持参した岩魚の塩焼き。
河鹿の鳴声を聞きながら、就寝。
(木賊温泉には、天然露天風呂もある。番台はおらず100円玉を箱に入れて自由に浴る。驚くほど開放的な混浴です。ご参考まで。)
当日の写真を載せてみました。
同好の士がおられましたら、ご連絡をお待ちしてます。
以上