松田悠子
遠藤様、いつも(才萩会 e-mail アドレスの)ご連絡をありがとうございます。
今回頂戴したご連絡には、大島玲子さんのメールが載っていてとても嬉しかったです。これで彼女と、男性抜きの内緒話もできるようになりました。
また、今回のメールには、新しいウィルス対策の情報も載せていただき、ありがたく思っています。教えていただいたアドレスにアクセスして、夫婦でじっくりと読んでみるつもりです。
さてアメリカですが、そちらで報じられている以上の目新しい情報は手元にありません。個人的には、先の見えない不安を抱えながらも何とか無事に毎日を送っています。ニュースで報じられている情報はさておき、五感で感じているアメリカの雰囲気などお知らせしてみましょう。
まず巷ですが、食品や生活必需品を扱うスーパーマーケットの休日の混み具合には、事件前とそれほど変わっていない感じがします。ただし、高級かつ高価なイメージの店と庶民的かつ廉価なイメージの店とでは、明らかに混雑ぶりに大きな差が見られます。また、デパート、特に家具などの高額商品の売り場には殆ど人影を見ることができません。(尤も、事件前は行ったことがないのですが。)
事件による消費の冷え込み、不況の加速、失業率の増加等、不安材料は際限なくあるようですが、私としては、ともかく主人が中途で失業せずに、契約期間をつつがなく過ごしてくれればと思うばかりです。
町を歩くと、そこかしこに星条旗を見ることができます。家の入り口に竿を立てて掲げてあるもの、ベランダに張り渡してあるもの、車のアンテナに翻っているもの、果ては星条旗を羽織って歩いている人まで見かけられます。(実は、我が家でも、主人が勤め先で支給された紙製の小さい星条旗を本棚の上に飾っています。)
半旗もたまに見かけますが、殆どは半旗になっていません。星条旗を掲げるのは、犠牲者への哀悼だけでなくアメリカの一致団結の意志を示すものだからでしょうかね。(これはあくまでも想像ですが。)
ひるがえって、私たち日本国民の日の丸に対する考え方を思わずにはいられませんでした。私などは、日の丸と言えば、オリンピックか右翼かというイメージしか沸いてきません。良し悪しは別として、国旗に絶対的信頼と誇りを持っているアメリカ国民にうらやましさを感じてしまいます。
この事件の落とす影を目の当たりに見るようになるのはこれから先でしょう。この歴史的事件の最中に当事国に居合わせたのも何かのめぐり合わせ、どう転ぶのかを腹を据えて見ておきたいと思います。
次は全く個人的な話になります。
自宅から徒歩で15分ぐらいのところにある Redondo High School というところで、地域主催のAdult School が開かれています。「第2国語としての英会話レッスン」というプログラムを見つけたので、先週水曜日の午後、詳しい情報を求めに行ったところ、「すぐに入れますよ、今晩来れますか?」(勿論英語で)と聞かれて、断る理由も言葉も探せないままに、つい「Yes」と答えてしまいました。「See you tonight」ということで、結局、その日の夜の部(ペーパー上では6:15〜9:30)に出席せざるを得ない状況になってしまったのです。
さて、夕方、日本人的感覚で指定時間(6:15)の約10分前に教室に到着です。ヒスパニック系らしいお兄さんがひとり教室の前に立っているだけ、6時15分を過ぎても20分を過ぎても数人がポツポツと集まってくるだけ、で、いつ始まるのかなあと思っていたら、30分過ぎにどやどやと入ってきてあっという間に30程の椅子の大半が埋まってしまいました。
がやがやと賑やかになったころあいに、ピンクのスーツ姿、比較的年配の長身・金髪の先生が颯爽と入室、おうおうと見とれていたら教壇の前まで行って矢庭にヘアー・ブラシを取り出し金髪を梳き始めました。
そんなことであっけにとられていてはいけません。新人は、先生に書類(といっても、名前、住所、生年月日などを書いたメモ程度のもの)を提出します。私の前に書類を提出したお兄さんは、先生に熱烈な抱擁の歓迎を受け、額にキスまでされていました。私に対しては先生も少し遠慮をされたのでしょうか、まずは握手をして頂きました。
教室に日本人3人を見つけることができました。待ち時間の間に、全く分からない各種言語に混じって日本語を耳にしたのです。日本人ですか?と声をかけて近づきになることができました。今後大いに頼りになりそうでほっとしています。
授業が始まると、先生の口からは立て板に水のごとく英語が流れ始め、何がなんだかわかりません。ここは確か初級クラスのはずなのだが・・・・こんな調子で質問でもされたら全くお手上げ状態だなあと不安に駆られていたら、ここまでは本題に入る前の四方山話であることがまもなく分かってきました。
本題つまり正規の授業の内容は「前置詞」について、絵入りのテキストを用いて「at,on,in,in front of ・・・」等の使い方の勉強です。内容的にはそれほど難しいものではないのですが、先生の質問の意味が分からず首をひねっていたら、隣席の親切なお兄さん(見たところヒスパニック系の)が一生懸命教えてくれました。
先生の授業はいかにもアメリカ的でエネルギッシュです。矢継ぎ早に質問がきます。30人もの一人一人に質問がされ、新人である私などには大分遠慮をされていたらしいのに、3度もお鉢が回ってきました。間違えても全く苦にならない雰囲気に安心しました。分からない人には辛抱強く教えてくれます。ようやく分かると先生の抱擁があったりします。
面白いことに気が付きました。日本人以外のたいていの人は、結構話ができて先生の言葉が理解できる人でも、文字を読むとなるとなかなか読めないのです。逆に、話し言葉は殆ど分からなくとも文字はすらすら読める日本人、文化の差ですね。
授業の間にも遅れて入ってくる人が結構多いのには驚きます。仕事か何かの都合なのでしょうが、先生は気にせずにどんどん授業を進めていきます。遅れてきた人たちも、そのまま授業に溶け込んでいき、全く違和感を感じさせません。
いつのまにか教室の椅子は完全に埋まってしまっていました。先生は最後のひとりまで面倒を見てくれます。授業終了後に、このクラスで使うことになっているテキストの買い方を日本人に教わっていたら、先生が近づいてきて心配そうに見守っていました。私がようやく納得して、「I see」と言ったら、先生が途端に抱きしめてくれました。
以上、突然の入学「第1日目」のことを書いてみました。クラスは、月曜日から木曜日まで毎日あるということなので今週から少し忙しくなりそうです。60の手習い、結果はどうなるでしょうか?ね?