アメリカから 第9信

松田悠子


中込さんがお送りくださった才萩会の記念文集、先日受け取りました。早速製本して見たところ、ハンディで見栄えもいい本に仕上がり、これを考えてくださった皆様のお知恵に感心しています。暇に任せて楽しく読ませて頂いているところです。

それにしてもクラスメートの皆様には、いろいろな分野で大活躍しておいでなのですね。皆様のお顔を思い出しながら読んでいくうちに、自分は過去60年間に何をしてきたのだろう?、何か身についたものはあるのだろうか?と、かなりの劣等感にさいなまれてしまいます。この本の刺激を受けて、自分を少しでも高めようと発奮できれば最高なのですが。

目下日本でもニュースになっているであろうところの南カリフォルニア一体の火事についてちょっと現状報告させていただきます。

火事のニュースは、先週の金曜日あたりから本格的に流れ始めました。先週の火曜日に、主人が東側への出張帰りの飛行機から2、3ヶ所ほどロサンゼルス
近郊での山火事を見たと言っていたのですが、その時は殆どニュースにも出てこない状態でした。4、5日たってかなり燃え広がってから、本腰を入れて消火活動に取り掛かったきらいがあるようです。ここロサンゼルスは、1年を通して殆ど雨が降りません。しかもこのところ30℃を越える真夏日が続いていました。関係者にしてみれば、この季節の山火事は年中行事の一部とたかをくくっていたのでしょう。

実は、こちらのテレビ報道は日本の報道に比べると客観性に欠けていて、正確な情報を把握することが結構困難なのです。ライブと称してずっと放映を続けてはいるのですが、映るのは火事そのものの影像と、興奮して喋り捲るアナウンサーの顔と、インタビューを受けてやはり興奮状態で喋り捲る被災者やファイアーマンの顔だけ。地図などを含め資料やデータなどが殆ど使われないので、自分たちの住まいがどの程度の危険性に曝されているのかを判断するすべがなく、イライラします。地図やモデルなどを使って、どの位置でどのように燃えているかを分かり易く報道する日本の報道のすばらしさを再認識しているところです。

限られた情報からの判断ですが、私どもの住まいはロサンゼルスの中では現場から最も遠い海岸沿いに位置しているため、類焼の心配はないと思われます。
とはいいながら、サンタ・アナ風という季節風があちこちの現場から立ち上る煙を海に向かって運んでくるため、この辺の空も煙に覆われ、きな臭い匂いがします。

テレビで不必要な外出は避けるようにと注意を促していますので、日課の散歩も休んでいるのですが、室内も安全地帯とはなりません。夏が涼しいためエアコンを備えていないアパートなので、これには本当に困っています。ありあわせのマスクをしたり、室内運動をかねて濡れタオルを振り回したりしています(結構良く煙を吸着するらしく、すぐにタオルがきな臭くなります。)が、喉や目の痛みを防ぐすべはありません。

早く鎮火しないかなあと、どす黒い空を仰ぎながらため息をついているここ数日です。寒くなく、蒸し暑さとは縁遠く、雨も降らないカリフォルニアの気候は最高と思っていたのですが、こんなところに落とし穴があったとは・・・・何でもいいことづくめというわけにはいかないようでした。

今日も、部屋にこもって火事のニュースを眺めながら過ごす一日になりそうです。日本の秋を満喫しておいでの皆様のことをちょっと羨ましく思いながら・・・