110207

 

新しい年が明けて早や2月に入り、少し春めいた感じがありますが、皆さんお元気にお過ごしでしょうか。 

 

先般小生が主宰する太極拳グループで新年会をやり、例年のことですが、東洋医学に関する一寸した話をしました。今回の投稿はその時のものです。

少しでも皆さんが健康を考えるときの参考になれば幸いです。

「養生について」  〜先人の知恵に学ぶ〜

平成22年の新年会で「東洋医学における健康感」で養生とか未病について触れましたが、今回は養生について先人の知恵を追ってみたいと思います。

まず、養生とは何でしょうか? 広辞苑によると @生命を養うこと。 健康の増進をはかること。 摂生。 A病気の手当てをすること。保養。 とあります。

今日話したいのは@についてです。

  1. 約2000年前に書かれた「黄帝内経」は東洋医学最大の古典


    「素問 上古天真論篇」という養生法を説いたチャプターに

    1. 飲食に過不足がないこと

    2. 心身の過労を戒める

    3. 春夏秋冬の自然の状態に調和して生きる  

 等々の記載が見られます。

「素問 四気調神大論篇」というこれも養生法を説いたチャプターに

  1. 春の養生法:自然、人体とも陽気が多くなる時期、心身のびのびと活動的な気持ちで

  2. 夏の養生法:陽気が最高、適度に運動して適度に発汗を

  3. 秋の養生法:陽気が少なくなる、イライラせず活動は控えめに

  4. 冬の養生法:陽気が最低に沈む、活動や発汗を抑える、早寝遅起

  1. 「呂氏春秋」は2300年程前に書かれた広い範囲にわたる思想書

    「達鬱篇」というチャプターに ”流水は腐らず、戸枢は螻(虫食い)さず、動けばなり。 形気も亦然り、形動かざれば精気流れず、精気流れざれば気鬱す”という有名なフレーズがあります。

    これは形体が動かなければ体内の気は流れず、気が流れずに鬱滞すれば、様々な問題(症状)が現れるという事を言ったものです。 

    気功や太極拳は体内の気をのびのびと流す効果があると言われています。 ここはずばり実感するところですね。

  2. 「養生訓」 抄録     〜洋三君が養生訓を語る〜

     

     貝原益軒




    1630年 福岡藩の藩臣の家に生まれる
    医師、儒者、博物学者、庶民教育家
    益軒十訓などを著わす
    養生訓は健康維持を目的とした生活全般の心得書で、江戸時代最大のベストセラー
    1714年 死去

     

     

     

     

     


    • (命の尊さを説いて)

      人の身は父母を本とし、天地を初とす。 

      天地父母のめぐみを受けて生まれ、また養はれたるわが身なれば、わが私のものにあらず。 

      天地のみたまもの、父母の残せる身なれば、つつしんでよく養ひて、そこなひやぶらず、天年をながくたもつべし。

    • (養生の大切さを説いて)

      人の命は我にあり、天にあらず、と老子いへり。

      人の命は、もとより天にうけて生まれつきたれども、養生よくすれば長し。

      養生せざれば短し。然れば長命ならむも、短命ならむも、我心のままなり。

    • (心気を養う大切さを説いて)

      養生の術は先ず心気を養ふべし。

      気をそこなはず心をやわらかにし、気を平らかにし、怒りと慾とをおさへ、うれひ・思ひをすくなくし、心をくるしめず、是心気を養う要道なり。

    • (体を動かすことの大切さを説いて)

      心をしずかにし、身をうごかすをよしとす。 

      流水はくさらず、戸枢はくちざるが如し。

      これうごく者は長久なり、うごかざる者はかへって命みじかし。

    • (慾を慎むことの大切さを説いて)

      人の身には口・腹・耳・目の欲ありて、身をせむるもの多し。 

      およそ人のやまひは、皆わが身の慾をほしいままにして、つつしまざるよりおこる。 

      養生の士はつねにこれを戒めとすべし。

    • (飲食の節制を説いて)

      飲食は人の大欲にして、口腹の好む処也。

      其このめるにまかせ、ほしいままにすれば、節に過ぎて必ず脾胃をやぶり、諸病を生じ、命を失なふ。

       (「養生訓・和俗童子訓」 貝原益軒 岩波文庫 \700)
       (「養生訓に学ぶ」 立川 昭二 PHP新書 \660)

  3. 「ホリスティック養生訓」(帯津良一 春秋社 \1,800)抄録

     帯津良一:


    1936年 埼玉県川越の生まれ
    帯津三敬病院名誉院長
    ホリスティック医学による医療を推進
    著書多数

    本書は内外の養生に関する古典を引用し、帯津氏の解釈を述べたもの。

    引用されている古典が多岐に亘っており、本書自体が興味深々の名著。

    • (養生で最も大切なのは)

      私には「暢情志」(こころをのびのびとさせる)がいちばん上位にくるように思います。

    • (養生の要点を説いて)

      その「死して朽ちず」のための第一の秘訣が「敬」なのです。 

      他者を敬い、自己をつつしむとは、自分の周囲の外界の場に思いを馳せ、かつ、自分の場を深く思うことではないでしょうか。 「敬」はまさに養生の基本です。

    • (現代文明を憂えて)

      養生とは大自然の摂理に則って生きることです。

      大自然の摂理に則って生きるとは自分の生命場の秩序性を大自然の場のレベルまで高めようと努力することではないでしょうか。 

      生活の便利さと快適さを追い求めるあまり、大自然との仕切りを強固にしてしまって、養生の道を見失ってしまったのが現代かも知れません。

    • (気功の意義を説いて)

      気功は生命場を整える方法であって、生きることそのものです・・・。功法は問いません。 自分に合ったものを選んで続けていくことです。 

      十年一日のごとく続けてるためには、楽しくやれるもののほうが良いと思いますし、できれば良い仲間もいたほうが良いでしょう。

    • (太極拳に言及して)

      私自身、いくつかの功法に親しんでいますが、特に太極拳をお勧めします。 

      太極拳も気功の一種ですから、他の功法より優れているというわけではないのですが、太極拳の特質が、老後をよりよく生きるのに適しているような気がするからなのです。