中欧オペラ紀行(1)

金子忠次

―ブダペスト その1―

 

この冬、2月下旬に恒例となったオペラ見物ツアーに行ってきた。すでに賞味期限を過ぎてしまったが旅の備忘録として少しずつ書いてみることにした。(2月18日〜2月27日)

旅の行程を下に書いたが、何しろ、現地8泊のうち、オペラを7つ見るという、オペラ好きにはたまらない行程だった。一方で昼は観光・夜オペラの毎日で充実し過ぎというか、最後は体力勝負の旅であった。   ( )内はその日見たオペラ。

今思い出してみると、どの一日も楽しくて、心満たされて、まさに夢紀行だったと思う。ツアーのマネージャー兼添乗員兼ガイドをしていただいた信愛のO先生に心から感謝したい。

第1日 福岡→名古屋→フランクフルト→ブダペスト(泊) 
第2日 ブダペスト(泊) (ワーグナー「タンホイザー」)
第3日 ブダペスト→ウィーン(泊) (プッチーニ「トスカ」)
第4日 ウィーン→ザルツブルク→(泊) (グノー「ロミオとジュリエット」)
第5日 ザルツブルク→ウィーン(泊) (モーツァルト「魔笛」)
第6日 ウィーン→ブラチスラヴァ(泊) (チャイコフスキー「エウゲニーオネーギン」)
第7日 ブラチスラヴァ→ウィーン(泊) (フロトー「マルタ」)
第8日 ウィーン(泊) (ドニゼッティ「愛の妙薬」)
第9日 ウィーン→フランクフルト→成田→福岡

―ブダペストの名所見物―

今回のツアーの始まりはブダペストからである。

町の真ん中をドナウ川が流れる美しい町である。観光ガイドには「ドナウの真珠」とか書かれている。確かにこれは納得できる。天気が好かったせいもあるが、建物の白さが川と空の青さに映えて本当にきれいだった。

この国は10世紀ころアジアからやってきたマジャール人がつくった国である。しかし今や1千年以上たって完全に西欧化してしまい、人々の顔にアジアの面影は見られない。ただ、人の名前は日本のように先に姓、後に名を書くそうだから、そんな所に片鱗が残っているらしい。作曲家フランツ・リストは西欧流にいえばリスト・フランツ、ゾルタン・コダイはコダイ・ゾルタンなのだそうだ。なんだかヘンである。 

訪れたのは2月の中旬だったから日本よりかなり寒くて、ドナウ川には大小の板状の氷が流れていてなかなか風情があった。上流のオーストリアかドイツあたりから流れてきたのだろうか。観光名所の1つ、「漁夫の砦」は絶景ポイントの1つで、川をはさんだブダペストの街が眼下に拡がっている。

ちなみに、ブダペストと言う名前は、ドナウ川の両岸にあったブダとペストが一緒になってブダペストになったそうである。この絶景ポイントのある丘はブダ地区にある。

天気にも恵まれてゆっくりとこの絶景を楽しんだ。

目抜き通り、「アンドラーシ通り」の両側には古い素敵な建物が1キロ以上にわたって立ち並んでいて壮観である。

 

向こうの人達は、街の景観を非常に大事にしていてどこに行っても絵になる。日本の都市の街角で感じる猥雑さがない。日本人は街の景観などお構いナシに家を建ててしまうし、古いものはドンドン壊すし、全くやりきれない。街全体の景観など誰も考えない。

 

ついでにいえば、日本の街の景観を悪くしている最大の元凶は電柱と電線だ、と言うのが私の持論である。(これを言い始めるとキリがない!)

この大通りが始まる所に「英雄広場」というのがあって、そこに建国の英雄たちの立派な像が立っていた。彼らがアジア(ウラル山脈のあたり)からきたというマジャール人だ。しかし像の顔つきをみると既にヨーロッパ人の顔をしているのでこれにはちょっとがっかりした。ずっと東の方の遊牧民族のような風貌をしていたらもっと親近感を覚えたであろうが。今いる人達は先祖がアジア系だということをあまり言いたくないのだろうか。

13世紀にはモンゴルの来襲を受け、16世紀にはオスマントルコに蹂躙されているから、アジアといわずアラブといわず、東から来る連中に対しては嫌悪感があるのかもしれない。

意外に知られていないが、ブダペストは温泉の町である。火山国でもないのにどうしてだろうか。今回泊まったホテルも温泉付きだったので、早速入ってきた。なんと、”混浴”と言われて期待感で胸が膨らんだのだが、そんなにうまくいくはずはなく、結局これは水着着用が規則、ということで一件落着してしまった。

驚いたのは、浴槽が広いことと、建物が豪華なこと、お湯の温度が低いこと。
広い、というより、これは始めからプールといったほうがよくて健康維持のための運動施設というコンセプトらしい。温水プールなのだ。しかし中はまるで宮殿である。これだけは日本の温泉は真似ができない。(いくらカネがかかるかわからん)

温度は最高が36℃!、温度別にプールが別れているが最高の所でもヌルくて入っていられない。入ったが最後出るに出られず小一時間ただただじっと漬かっていた。出たあとはホカホカしていたから温泉であることは間違いないようだが。

風呂といわれてカメラを持っていかなかったので、映像がなく残念である。水着美人がたくさんおったのに。

アンティークの店があった。店の軒先に面白い看板?が吊り下げられていた。

ハンガリーの名物は食べ物ではグラーシュという牛肉と野菜を煮込んだシチュー。パプリカが使われている。こってりした味付けで肉も柔らかく、なかなか美味しかった。ただパプリカの香りがやや鼻につく感じ。


飲み物ではトカイワイン。これはおいしいが、甘くて度も強めでたくさんは飲めない。

音楽ではチャルダッシュ・・・ハンガリーの作曲家、カールマンのオペレッタによく出てくる。情熱的でやや物憂いダンス音楽で是非本場で聴きたかったがチャンスがなかった。

.....つづく