ともかく、モーツァルトから遡ること約100年、バロック期のオペラである。今回見たオペラはテセウスの物語の一部だと思うが、解説がフランス語なので、さっぱりわからない。
まあバロック音楽を楽しむつもりで、と思って見ることにした。
この点では面白かった。オーケストラは、全部かどうかわからないが、今がはやりの古楽器主体の編成のようであった。典雅というか、天女の舞い踊るときにはこのような音楽が演奏されるであろう、というような音楽である。
下の写真はオーケストラボックスであるが、右側に大きな琵琶のような楽器がある(女性が抱えている)。リュートであろうか。ネットで調べたところではリュートは棹が途中で曲がっているのに、これはまっすぐ伸びているので、違う楽器かもしれない。棹が特別に長いので目についた。
管楽器も形は現代のものと似ているが、響きは素朴で奥ゆかしい感じがした。いずれにしても、全体としてはバロック音楽らしい真に”妙なる”音楽であった。
さて、歌手のことである。今回もお目当ての歌手がいた。アンネ・ゾフィー・フォン・オッター。スウェーデン出身の現代を代表するメゾソプラノ歌手である。
「バラの騎士」のオクタヴィアンをDVDで見て印象に残っている。風貌も歌も北欧の人らしく端正で味わい深い歌い方が好きだ。
ところで、今回のバロック・オペラでは登場人物が多く、初めどれがオッターかわからなかった。途中からああこの人かな、と気がついた次第でお粗末なことであった。
このオペラの中では、彼女は悪女風の役回りだったようだ。
テゼは全く初めてで筋書きもわからないまま終わってしまったので、オッターについても他の歌手とは少し違うな、というくらいで、残念ながら特別な印象が残っていない。
イタリアオペラのようにこれぞ、という聞かせどころがないのである。いつか、私のよく知っているオペラでこの人の舞台を見たいものである。
こういうオペラを楽しむには、全般に今回はこちらが勉強不足であった。
カーテンコールでのアンネ・ゾフィー・フォン・オッター