スイス・パリ オペラツァー(8) パリ その3(最終回)

金子忠

  1. リュリの「テゼ」 (2月27日 シャンゼリゼ劇場)

パリでリュリのテゼを見るよ、と言われたとき、リュリってなに? テゼってなに? というのが最初の感想であった。


今まで見たオペラは詳しい内容は知らなくても、少なくとも作曲家の名前、或いはオペラの題名はどこかで聞いたものだった。それがこのオペラに限っては両方とも全く聞いたことがなかった。


そこで、インターネットで調べてみると、
 

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リュリとは・・・・

ジャン=バティスト・リュリ(Jean-Baptiste [de] Lully, 1632 - 1687)はフランス盛期バロック音楽の作曲家。ルイ14世の宮廷楽長および寵臣として、フランス貴族社会で権勢をほしいままにした。(『ウィキペディア』より)


どこかの町の貧乏作曲家かなにかと思っていたら、とんでもない、フランス国王の側近という偉い人なのだった。

 

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テゼとは・・・
ギリシア神話で、アテナイの英雄「テセウス」のこと。クレタ島の迷宮に怪獣ミノタウロスを討つなど、ヘラクレスに劣らぬ数々の冒険をして功績をたて、のちアテナイの王となり、アッティカを統一した。。(『ウィキペディア』より)

 

ともかく、モーツァルトから遡ること約100年、バロック期のオペラである。今回見たオペラはテセウスの物語の一部だと思うが、解説がフランス語なので、さっぱりわからない。
まあバロック音楽を楽しむつもりで、と思って見ることにした。

この点では面白かった。オーケストラは、全部かどうかわからないが、今がはやりの古楽器主体の編成のようであった。典雅というか、天女の舞い踊るときにはこのような音楽が演奏されるであろう、というような音楽である。

下の写真はオーケストラボックスであるが、右側に大きな琵琶のような楽器がある(女性が抱えている)。リュートであろうか。ネットで調べたところではリュートは棹が途中で曲がっているのに、これはまっすぐ伸びているので、違う楽器かもしれない。棹が特別に長いので目についた。


管楽器も形は現代のものと似ているが、響きは素朴で奥ゆかしい感じがした。いずれにしても、全体としてはバロック音楽らしい真に”妙なる”音楽であった。

さて、歌手のことである。今回もお目当ての歌手がいた。アンネ・ゾフィー・フォン・オッター。スウェーデン出身の現代を代表するメゾソプラノ歌手である。

「バラの騎士」のオクタヴィアンをDVDで見て印象に残っている。風貌も歌も北欧の人らしく端正で味わい深い歌い方が好きだ。

ところで、今回のバロック・オペラでは登場人物が多く、初めどれがオッターかわからなかった。途中からああこの人かな、と気がついた次第でお粗末なことであった。

このオペラの中では、彼女は悪女風の役回りだったようだ。

テゼは全く初めてで筋書きもわからないまま終わってしまったので、オッターについても他の歌手とは少し違うな、というくらいで、残念ながら特別な印象が残っていない。

イタリアオペラのようにこれぞ、という聞かせどころがないのである。いつか、私のよく知っているオペラでこの人の舞台を見たいものである。

こういうオペラを楽しむには、全般に今回はこちらが勉強不足であった。


カーテンコールでのアンネ・ゾフィー・フォン・オッター