スイス・パリ オペラツァー(3) ルツェルン

金子忠次

ルツェルンはチューリッヒのほぼ南約50Kmの所にある。
人口約5.8万、歴史と観光の町である。

古くからアルプスを越えてイタリアに通ずる道が開けていて交通の要衝であった。

音楽関係では夏のルツェルン音楽祭で知られている。

  1. ピラトゥス山

ルツェルンへはオプショナル・ツァーでチューリッヒからバスで往復した。
チューリッヒからバスでほぼ1時間、ルツェルンは大きな湖の畔にあった。バスが町に近づくにつれてごつごつとした高い岩山が見えてきたが、これがアルプスの展望台としてガイドブックに書かれているピラトゥス山(2,132m)であった。

左はロイス川越しに見たピラトゥス山。
結構な高さがありしかも険しいので、あの山の上まで行くと聞いてエッと思ったが、下からロープウェイで山頂まで運んでくれるのである。

山容から”悪魔の住む山”とい言われている。ピラトゥスというのは古代ローマ時代、キリストに処刑を宣告したローマ総督の名前で、その亡霊がこの山に住むという伝説によるのだそうだ。

ピラトゥス山のロープウェイ。クリエンスという麓の駅から高度差約1,500m、途中乗換えがあるが絶壁をかなりの急角度で上がってゆく。スリル満点だ。所要時間40分。

下にルツェルンの町が拡がる。雪は少しあったが今年は例年になく雪が少ないのだそうだ。洋の東西を問わずこちらも温暖化の影響らしい。

地図で見るとアルプスからはかなり距離があるので実は展望はあまり期待していなかったのであるが、頂上に着くとやや遠目ながらアルプスの大パノラマが眼前に拡がってその雄大な景観に圧倒された。

ユングフラウ、アイガーといったベルナーアルプスの山々がはるかにくっきりと見える。この日は天気も快晴で心ゆくまでこの素晴らしい景色を楽しんだ。これでもアルプスのごく一部を見たにすぎないわけで、マッターホルンとかモンブランは別の山群でここからは全く見えない。アルプスの大きさ、奥深さを感じた。

こんな景色を見ると山好きにはたまらない。オペラツァーをやめてグリンデルヴァルトとかツェルマットとかまで足を伸ばし、あの白い山々に登りたい誘惑にかられた。

  1. 河岸の旧市街など

ルツェルンはフィーアヴァルトシュテットという長い名前の湖の畔にあるので見るべきところも水をバックにした風景が多い。

下の写真は14世紀に作られたというカペル橋、湖に注ぐロイス川に架かっている。木造だがこれでも城壁の一部だという。頼りない城壁だが景観としてはなかなかのものである。8角形の塔は見張り台だったそうだ。

湖にはいろいろな種類の水鳥がたくさんいる。特に白鳥がたくさんいてこの町のシンボルになっている。下の写真は河岸の古い家並み。下左の写真の中央の建物は市庁舎で後ろの塔に大きな時計台がある。

17世紀に建てられたイエズス協会(上写真)。教会建築は水のある風景とマッチする。水面に映る建物が美しい。

旧市街で見た壁を絵や美しい模様で飾った家。なぜか外壁にきれいな絵を描いている家が多かった。こんな所の街歩きは楽しい。

下左は湖岸にあるルツェルン美術館。この中にあるコンサート会場が毎年夏に行われるルツェルン音楽祭のメイン会場になるのだそうだ。

この地に関係のある音楽家としてはリヒャルト・ワーグナーがいる。彼はこの地にコジマと共に6年ほど住んだことがありその住まいが記念館になっている。

ここで「ニュルンベルクのマイスタージンガー」が作曲されたと言われるとこの町に親しみがわいてくる。一方、ワーグナーはルツェルン音楽祭の創設にも関わっていたそうである。

旧市街では朝市が開かれており、大勢の人で賑わっていた。(下右)

アルプスの雄大な山並みを少しでも眺めることができて望外の幸せな1日だったが、この夜もチューリッヒでオペラがあり、開演時間に間に合わせるため文字通り後ろ髪を引かれる思いで早めにルツェルンの町を後にした。

次は絶対にアルプスのトレッキングに来るぞ!とつぶやいたのであったが、ほんとに来れるだろうか・・・