北イタリアの町 - まとめ編

北イタリア・オペラツァー(その16)

金子忠次

<旅の感想>

趣味を同じくする仲間との旅行は本当に楽しいものです。年1回のツァーですが今回もまたまた夢紀行になりました。総勢25人はやや多い人数でしたが、その分賑やかで楽しくて修学旅行気分でした。

私自身はイタリアに行くのは初めてだったこともあり、見るもの聞くもの全て物珍しく毎日好奇心を刺激されました。移動が多いことと、昼観光&夜オペラというスケジュール的なきつさにも関わらず、毎日快い緊張感が続きました。身体はそれほど疲れは感じませんでした。

オペラに関しては、何と言っても世界的に有名なオペラの殿堂、ミラノ・スカラ座で生のオペラを見ることができたことが第一です。スカラ座の中に入っただけで感激でした。歌手ではファン・ディエゴ・フローレスとサルバトーレ・リチートラという、今をときめく二人の若手テノールの声を聞けたことが最大の収穫です。期待に違わぬ熱唱に我を忘れました。

その他の若手歌手では、ソプラノのデジーレ・ランカトーレとバリトンのアルベルト・ガザーレが声と演技で将来に期待を持たせてくれました。

面白かったオペラは「「連隊の娘」「カバレリア・ルスティカーナ」「道化師」。何れも筋書きと歌を良く知っているもので、ここのところは月並みですね。「蝶々夫人」があまり面白くなかったのは前に書いた通りです。

観光という面では、やっぱりというかさすがというか、イタリアはすごい、楽しい、美しい、を堪能しました。いろいろいいもの、面白いものを一杯見ましたが、特に印象に残った町は、やはりフィレンツェ。あそこは特別です。花の大聖堂、ウフィッツィ美術館、シニョリーア広場・・・。是非また行きたいところです。その他では、何箇所か訪れた昔ながらの雰囲気の残る小さな町。クレモナ、マントヴァ、サンジミニャーノ、シエナなど。まるで中世そのものの異次元の世界に遊びました。なかでもサンジミニャーノは予備知識が全くなかったこともあり、強く印象に残りました。

サンジミニャーノには町全体に昔の街並みがそっくりそのまま残っているのにびっくりしました。日本は木と紙の建築なのに向こうは石。材料の違いはあるにしても、古くてもいいものは残す、という基本のところがヨーロッパの人たちは徹底しています。どんなに壊れても元の通りに復元してしまうところは凄い、執念を感じました。

<イタリアのお酒のこと>

今回イタリアに初めて行って、アルコールに関してはイタリアはほぼワイン一色であることを知りました。驚いたことはビールが殆どないことです。今まで北の方のドイツ語圏ばかり行っていましたので、どこでもビールかワイン、今日はどっちを飲もうかな、ということでいつも悩んでいました。

イタリアではビールは飲むことは飲みましたが、あまりポピュラーではないようでビールをオーダーする時は何となく気が引ける思いでした。アルプスの北と南ではえらい違いです。町中のスーパーでビールを買おうと思ったら売り場がなかなか見つからず往生しました。よく見ると広いワイン売り場の片隅にそっと置いてありました。そして当然のことながらドイツやチェコの銘柄ばかりです。

というわけでワインばかり飲んでいましたが、ワインの味がよくわからない私にはどれが美味いのかよくわかりません。ただ、お土産にサンジミニャーノで買った白ワイン(写真)が非常に美味しかったということだけはいえます。そしてあの辺り、トスカーナ地方の田舎の景色はどこまでも続く丘のうねりにブドウ畑がいっぱいだったことが鮮明に思い出されます。

<キリスト教のこと>

オペラツァーでヨーロッパに行くたびに、オペラのみならず西欧の芸術を理解するには、キリスト教とギリシャ・ローマ文化を知らないとダメだということはずっと感じてきましたが、今回も全く同様、あちこちで特に宗教のカベにぶつかり、理解できない歯がゆさを思い知らされました。

考えてみればイタリアはカトリックの総本山、ヴァチカンのお膝元ですからその方面の心得がないと音楽でも絵画でも深いところでは理解できません。ルネッサンス期の芸術、特に絵画は宗教画ばかりです。建築の傑作と呼ばれるものも教会建築です。

いつもキリスト教のことを勉強しなければ、と思いながら帰ってくるのですが、結局何も勉強することなしにきました。そのツケがまわって、オペラでもあるところから先はカベがあってなかなか理解が進みません。毎度のことながら、ツァーの後の最大の反省点です。

ただし、宗教に関することは人間の深層心理に関わることであり、本で読んでもわかったと思うのは表面づらだけのことでしょう。毎週のように教会に行ってイエスの教えに魂を傾けるキリスト教徒の心の奥底までは、とても届かないことも確かだろうと思います。日頃から宗教心のうすい私にはこれは苦しい課題です。(右はピサのドゥオモ の内部)

最後にブログタイトルの背景写真の全景です。(フィレンツェのヴェッキオ橋)