プッチーニの「蝶々夫人」

北イタリア・オペラツァー(その5)

金子忠次

 

ミラノ・スカラ座の第2夜はプッチーニの歌劇「蝶々夫人」 

このオペラは私にとって鬼門です。過去このツァーでヨーロッパに来て2回見ていますが、2回とも満足できませんでした。

今回は大スカラ座であるし、3度目の正直ということで期待していましたが、残念ながらまたもや不満足な結果に終わりました。

理由はいくつかありますが、最大の理由は歌手の容姿です。オペラは歌とオケが半分以上を占めるので歌手の容姿は問題ではないという人もいますが、私はそうは思いません。 

半分は音楽としても、残りの半分は視覚的要素で決まります。以前にも書いたことがありますが、歌舞伎役者が醜男より美男子の方がいいのと全く同じです。TVドラマでも(一般論として)主役は美男美女のほうがいいのです。(偏見と言われそうですが)

今回特に不満だったのはピンカートンです。若くて血の気の多いアメリカの海軍士官、という役柄です。

蝶々さんが死ぬほど恋い焦がれる役ですから誰もが惚れてしまうようなルックスが必要なのです。(実際はそんなにハンサムである必要はないのですが)

今回のピンカートンはこの点でNGです。いわゆるズングリムックリの体型で背も高くありません。歌は悪くなかったと思いますが。これでは楽しめません。(上の写真、白いスーツ姿がピンカートン、左がシャープレスです。これでおわかりと思いますが。)

次に蝶々さんです。韓国人らしい名前の人でしたが体型、風貌ともにどこにでもいる中年のオバサン風です。

オペラの中での設定では蝶々さんは芸者とはいえ15歳の少女、余りに違い過ぎです。年齢についてはオペラ歌手は大体30歳以上、40代、50台はザラなので問題はないのですが、この歌手の雰囲気は蝶々さんには不向きです。

ただ指揮者は世界的に活躍しているチョン・ミュンフム。オーケストラは良かったと思いますし、コーラスもハミングコーラスを始めとして高いレベルで楽しめました。

準主役のシャープレスは私の好きなタイプのバリトンでこの人にも満足しました。

面白くなかったといっても、本当は半分くらいは質の高い音楽を楽しんだのでしたが・・・ 

歌手の外見にこれだけ拘ると顰蹙を買うのは必定ですが、これは個人的な好みの問題でどうしようもありません。

主役の二人の名誉のために言っておきますが、二人とも歌唱の点では最高とまではいかなくても、私にとっては十分満足できるレベルでした。

実は今回の「蝶々夫人」はダブルキャストで、逆の方では蝶々さんはフィオレンツァ・ツェドリンスが歌っていました。

こちらの方を聞きたかったのですが反対の方に当ってしまいました。フィオレンツァ・ツェドリンスは数年前ミュンヘンで「トロバトーレ」のレオノーラを歌ったのを聞いて感激した歌手です。最近人気上昇中です。


 
演出は浅利慶太、衣装は森英恵で舞台・衣装・小道具その他以前から定評あるものです。やはりこれは素敵でした。当然ですが日本人にはよく理解できます。

ただいつも思うのですが、「蝶々夫人」に出てくる日本人は動きはチョコマカ、やたらペコペコして何となく卑屈な人種として描かれていて面白くありません。 この点は何とかして欲しいと思っています。


 
スズキは日本人の藤村美穂子さん。(左から3人目、紫色?の着物) 日本人だけあって共感できる演技でしたが、なにせ出番が少なく物足りませんでした。
(なお舞台の写真は期間限定です。PhotoXなので)