ドニゼッティの「連隊の娘」

北イタリア・オペラツァー(その4)

金子忠次

 

ドニゼッティはモーツァルトより少し後、19 世紀前半にイタリアやパリで活躍したオペラ作曲家です。

 

大変な”多産系”で 70 以上もオペラを作曲していますが、現在上演されるのはこのうち 10 曲くらい、その中では、「ランメルムーアのルチア」「愛の妙薬」などがポピュラーです。

 

「連隊の娘」はこれらに次いで上演回数の多いものですが、どちらかといえばマイナーなオペラです。
 

マイナーとはいっても名歌手が出て熱唱を聞かせてくれればそんなことは無関係にオペラの醍醐味を味わえるのです。(右の似顔絵はドニゼッティ)

今回のオペラツァーで最も期待していたのがこのオペラです。理由は、主役のトニオを歌うファン・ディエゴ・フローレスにあります。

 

彼はいわゆるポスト3大テノールの一番手でいまや世界中のオペラハウスでひっぱりだこの売れっ子テノールです。 

実は女性の方の主役マリーにこれも当代一流のソプラノ、ナタリー・デッセイが出ることをスカラ座のHPで予告されていたのですが、こちらは年末になって何かの都合があったらしくデジーレ・ランカトーレという人に代わってしまいました。

 

デッセイが出れば現役の名歌手の競演になったのですが、これは残念ながら実現しませんでした。

このフローレスですが、さすが当代のテノールの第一人者といわれるだけあって素晴らしい声を聞かせてくれました。

 

特にハイCの高音を無理なくしかも張りのある美しい声で歌うところは実に感動ものでした。 天性の美声の持ち主です。

 

ペルー生まれといいますからスペイン系でしょうか、左のCDジャケットのようにルックスも抜群、人気急上昇中です。 
 

昔、アルフレード・クラウスという高音を得意とする名テノールの声を聞いて感激したことがありますが、同じ系統の声の質で久しぶりにクラウスを思い出し、感激を新たにしました。

この夜も大変な拍手、ブラボーで会場を興奮させました。この人の声を、オペラの殿堂ミラノ・スカラ座で聞けたこと、これだけでイタリアまで行った甲斐があったと思いました。
 

相手役のデジーレ・ランカトーレも今売り出し中のソプラノだけあって非常に美しい声でいいなあと思いながら聞きましたが、やや声量が足りなくて少し物足りない感がありました。

 

まだ30才前後の若さですから今後に期待するところ大です。ナタリー・デッセイが出ていたら、と思うとこの点は残念でした。
(右は当夜のランカトーレ)

オペラ全体は、ドニゼッティ特有の美しいメロディーに満ちており、しかも喜劇仕立てですから楽しい雰囲気で大いに楽しめました。

 

オペラを見る楽しさ、幸せを感じた一夜でした。