中欧オペラ紀行(10) ウィーン ―その2―

            

金子忠

―ウィーン国立歌劇場―


オペラ紀行であるから、ウィーンで見たオペラのことを書かねばならない。が、その前にウィーンには特に思い入れが強いので、またごたごた余計なことを書きそうで先が思いやられる。

ウィーンには主要なオペラハウスが二つある。ウィーン国立歌劇場(シュターツオーパー)とフォルクスオーパー(国民歌劇場)である。前者は一般のオペラ、後者はオペレッタが主体、と演目によって棲み分けがなされている。

 

しかし、オペラとオペレッタの境目はそれほど明確ではないので、厳密に分けることも難しいし、そんなに気にすることでもない。両方共通のレパートリーになっている演目は結構多いようだ。

 

 

ウィーン国立歌劇場(写真上)は、ミラノ「スカラ座」、ニューヨークの「メトロポリタン歌劇場」と並んで3大オペラハウスなどとと言われることもあるくらい、ご存知超一流の歌劇場である。

 

観光案内的にいうと、ウィーン国立歌劇場はリンク大通りに面した超一等地にある。

 

ハプスブルクの本拠地、旧王宮に隣接しているが、それもそのはず、ここは昔の宮廷歌劇場なのである。

 

外観といい、内部の装飾といい、まさに豪華絢爛、ハプスブルク時代の往時の繁栄を彷彿とさせる。(左の写真は入口を入ったところ)

 

1869年完成というから明治の初めの建物である。モーツァルトの「ドンジョバンニ」で柿落としして以来今日まで一貫して世界のオペラ界の頂点に君臨してきた。

 

客席数2200

右は天井中央のシャンデリア。

 

写真では大したことはないが本物を見るとなかなか存在感がある。 

 

内部は全体に馬蹄形になっていて、平土間を囲んでボックス席は2階から4階まであり、更にその上に5・6階がある。一番上が本当の天井桟敷。

 

我々は最初の日は4階のボックス席であった。隣のボックスの方を見ると下の写真のようになる。

 

手前長方形の箱状のものは、字幕ボックス?でふたを開けると歌詞が表示される文字盤がある。

 

残念ながらドイツ語か英語しか出てこない。初めはこれは便利!と思って英語版をみていたが、英文和訳のスピードが舞台の進行についていけない。頭が受験勉強モードになってしまって楽しむどころではない。混乱するばかりなので、後からは無視することにした。
 

字幕は舞台の両サイドか、上か下の方がいいと思う。それも望むらくは日本語で表示してほしい!
 


下の写真は4階から下の平土間を見たところ。

 

1階中央の奥が立見席。500人分くらいあるらしいが写真で見る通りすし詰め状態である。3時間以上も立って見るからしんどい。しかしチケット代は非常に安い。なんと約500円!これだったら毎日来てもいい値段だ。そのすぐ上のボックス席が特等席(ロイヤルボックス)というのもおもしろい。
 


前回書いたように、この歌劇場のオーケストラはウィーンフィルである。両者が全く同一でないことは前に書いたとおりだが、水準の高い演奏をすることで定評がある。私は素人で耳があまりよくないから詳しくはわからないし、オペラのときは大体ドラマの中に入り込んでいるからオケが良かったかどうかまでは気が回らない。平土間に座っていると、オケが全く見えないことも影響している。
 

今回は上の方のボックス席でみたからオケはバッチリ見えた。(下の写真)
指揮者とオケ、歌手、合唱団との呼吸の合わせ方など少しわかったような気がしておもしろかった。それにしても、曲が始まってしまうと指揮者は休むところがないから大変な重労働であることもわかった。

国立歌劇場は過去4回来ているので、生意気な言い方をすれば”また来たよ”ということになるが、いつ来てもここに入るときは独特の緊張感と感動がある。

 

まず建物の外観に感心し、中に入ればその豪華さに見とれてしまう。立派な身なりをした人達の中に混じって指定された席に座ると”ああ、オレは今、最高のオペラハウスに来ているんだな”と感慨にふけり、満足感に浸るのである。はるばる来た甲斐があった、と思う瞬間である。

(上記、知ったかぶりをしていろいろ書いているが、これらは全てものの本の受け売りである。間違っていたら、元の情報が悪いのである、と逃げを打っておく)
 

 夜のウィーン国立歌劇場