中欧オペラ紀行(7) 

ブラチスラヴァ ―その2―

金子忠

―スロヴァキア国立歌劇場―

ブラチスラヴァのオペラハウスはスロヴァキア国立歌劇場である。この劇場の存在は今回初めて知った。スロヴァキアは大国ではないが、首都のオペラ劇場としてここもさすがに堂々として存在感がある。内部も然りである。

 

 

この日の座席は3階の横の方のボックス席であった。高い所から見ると劇場全体が見渡せるし、個室をもらったようでリッチな気分である。

 

 

気分はいいが、高いところは実はあまりよくない。歌手は大体正面を向いて歌うことが多いので、上の階の、特にサイドの席の観客は目線が合わないのだ。それでなんとなく、よそよそしい感じになってしまう。舞台との一体感が損なわれる、ということになる。


平土間からボックス席を見上げる時はやや羨望の目で見るのだが、実際にそこで舞台をみる感じはぜんぜん違うのである。

 

上の方ほど値段が安いのもうなずける。ただ正面に近いところの2階席は特別でここは特等席である。ロイヤルボックスになる。

 

舞台を見る、ということとは関係ないが、ボックス席にいる人は下からは非常によく見える。ちょっと目立つ衣装を着けていればすぐに注目の的になってしまう。


我々も、平土間に座っている時は、開演前など退屈しのぎにボックス席を見上げて、今日はあそこに美人がいるなとか、あそこのカップルは仲がよすぎる、とか思いながら眺めるのである。


昔、オペラが貴族の社交の場であった頃は高貴な婦人達が華やかな衣装をまとってボックス席に座り、平土間からの視線を一身に浴びて優越感に浸っていたのである。


我々は下の方から見上げられると恥ずかしさに耐えられず、奥に引っ込んでしまう始末である。


左の写真はオーケストラピットであるが、観客席(右側)との間の廊下のようなところも舞台の一部(エプロンステージ)であって、ここに歌手が出てきて歌うこともよくある。最前列に座っているとすごい迫力である。