金井孜夫

 

前回の“自然に対し謙虚に−人類の進化−”に続き、
“(その2)−生命の進化−”について報告する。

■生命の定義(出典[1]:小林憲正『アストロバイオロジー』)

生命とは、次の4つの特性を持つものを言う。

@ 代謝(生命を自身で維持する仕組み)
A 自己複製(細胞の二分裂)
B 外界との境界(膜構造)
C 進化(変異)

■ 地球史−生命史のイベント(出典[2]:丸山茂徳・磯崎行雄『生命と地球の歴史』)

45.5億年前に誕生した原始の地球上に、わずか5.5億年で生命が誕生したのは奇跡と言える。

以後、生命は40億年をかけて、ゆっくりと繁栄して来た。

人類が誕生した700万年前は、図示出来ない位の直近である。

■ 地球生命の系統樹(出典[2])

バクテリア等の細胞核を持たない「原核生物」の出現は40億年前、哺乳動物を含む、細胞核を持った「真核生物」の出現は15億年前である。

陸上に植物が出現したのは 5億年前、生命の誕生からの35億年間は、地上に緑はなかった。

上の図を、上から下に見てほしい。

自分の親の親の親の・・・・と辿って行くと、40億年前の共通祖先=生命の誕生に辿り着く。逆に言うと、生命の誕生から今日まで、生命の糸は一度も途切れていない。

途中で一度でも途切れていたら、今の自分は存在していないことが分かる。今の自分の命の年齢は、40億歳である。

■ 「生命の起源」へのアプローチ(出典[1])

生命の起源は、未だ謎である。多くの研究者が努力している。

方法は、現存の生物から生物進化をさかのぼる「トップダウン方式」と、原始地球環境から化学進化を追及する「ボトムアップ方式」がある。

ここでは化学進化について触れる。

■ 生命体の材料(出典[3]:中村運『新・細胞の起源と進化』)

地球上の生命体の材料元素を示す。

第一元素(多量元素)は、水素、酸素、炭素、窒素の4種である。

■ ミラーの実験 −「原始地球」の再現(1953年)(出典[3])

下図は、ミラーによる原始地球のシミュレーション実験装置である。

原始大気を想定した混合ガスに、雷を想定した放電をすると、種々のアミノ酸が合成された。生命体の素材となるアミノ酸は思ったより簡単に出来ることが推定された最初の実験である。 

■ 化学進化のステップ(出典[3])

簡単な「分子」からなるアミノ酸などの、シンプルな「有機化合物」は、脱水縮合して原始タンパク質などの重合体となる。

■ 生命の始原(出典[3])

原始タンパク質などの集まりは「原子スープ」と呼ばれ、これらが集合して“生命の始原”である「始原細胞」となる。

これが自己分裂能を持つに至るプロセスはいまだ解明されていないが、初めは波などの外力により分裂したと考えられている。

始原細胞の2分裂の速さは、きわめてゆっくりで、数万年に1回程度との推定もある(ちなみに、現代の細菌は 20〜30分に1回分裂する)。

始原細胞が分裂と生長の機能を獲得するまでには、地球誕生から 5〜6億年を要している。

■ DNAの突然変異−累積と淘汰で進化へ(出典[3])

細胞分裂の際DNAは突然変異を起こし、いずれ進化となって定着する。

その頻度は以下のとおり。

自然突然変異(細胞分裂時DNA複製の誤り):細胞分裂1億〜100億回に1回    誘導突然変異(誘発因子による):オゾン、ウイルスなど

以上前編