主婦業代に関する一考

金井孜夫

先に投稿した「カミさんの骨折」で、主婦業は100万円/年としたところ、家族から大ブーイングを受けた。才萩会メンバー数人からも(その奥方の意見として)“安い”とのコメントをもらった。

また、遠藤君からは、このホームページの「語っぺし」に以下のコメントをいただいた。

金井君の「カミさんの骨折」を読みました。読んだあと、我が家のカミさんに大要を話したら、「家事の価値:100万円は安いんじゃない?!」と宣うた。

そこで、主宰するクラブの女性たちに同じ話をしてみた。

殆ど全員が「少ない」と言う。

絶対額で云々するのは、夫婦二人の総所得により事情が変わるので、1/31/23/4のどれが妥当と思うかと訊いたら、予想通り1/2が殆どであったが、中に3/4という人が何人かいた。言い分は、「家で何もしないではないか」とのこと。

1/3というのはゼロであった。

内助の功の価値は、矢張り相当に高騰しているようです。

皆さん如何、お感じになりますか。

そこで、主婦業代について少し整理をしてみることにした。 

  1. 現実的な主婦業代(=歳入・歳出を考慮した価格)

    私の前提は、家庭の歳入・歳出のバランス。

    1. まず、支出(歳出)について

      総務省統計局によると、全国平均(平成14年)の家庭における消費支出の比率は以下のとおり。

      食料費(いわゆるエンゲル係数): 23.2

      生活維持費(住居、光熱・水道、家具、被服、医療、交通・通信): 37.4

      教養娯楽: 10.2

      以上の計: 70.8

      これらは生活上の必要経費なので割愛出来ず、主婦業に払えるのは残りの29.2%、即ち年収の1/3と考えた。(食料費等上記の必要経費を切り詰めて生活の質を落とせば、何とか年収の1/2は捻出可能か。3/4は無理?)
       

    2. 一方、年収(歳入)について

      すでにリタイアして年金のみで生活している我々「年金者」世代の夫婦の場合、平均的な年金収入は約27万円/月と言われており、年収にすると324万円/年。(なお、賃金構造基本統計調査(平成18年)による我が国男子の全国平均賃金は、555万円/年。)

      以上から、「年金者」が払える主婦業代は、324万円×1/3で約100万円/年と見積もった。(「年金者」でなければ、年収が多い分もう少し払えるかも。555万円×1/3185万円/年。)
       

  2. 理想論としての主婦業代

    1. (1)米国で主婦業を“プロ”に依頼した場合

      米国人材情報会社サラリー・ドット・コムは、主婦約18,000人の作業時間を集計し、調理を「料理人」、家族の悩み相談を「カウンセラー」、子供の世話を「保育士」、子供の送迎を「運転手」などと家事を10項目に分類し、それぞれをその道の“プロ”に任せた場合の料金を積算した結果、年俸116,805ドル(約1200万円/年)に相当するとした。(この場合、食事は毎回“プロ”の「料理人」が作る高級料理か。高価な主婦業代とはなる。)
       

    2. 日本における主婦の「休業損害代」

      日本で専業主婦が交通事故や怪我などで入・通院をした時に、年収のない専業主婦に支払われると仮定した場合の「休業損害代」は、弁護士の試算によると、350万円/年とのこと(インターネット情報)。

      いずれにしろ、主婦業代として上記の@あるいはAを支払えれば理想的だが、歳入が「年金だけ」となった今となっては、とてもとても...。夕張市、大阪府、日本国のように、歳入・歳出を無視して借金をすれば別だが。
       

  3. リップサービスとしての主婦業代

    カミさんが言うには、“そもそも『大変だね。ありがとう』のひと言があれば、それでよい“と。

    であれば当方の懐は痛まないが、これまで永年カミさんに対して突っ張ってきた小生としては、今更てれくさくて、面と向かってそうは言えない。

    言い方を変えて、“君の瞳は100万ボルト”を借用し、思い切って“君の主婦業は100億円”と言おう。リップサービスとして。

以上

[付記]

その後、骨折の手術をしたカミさんは退院し、毎日リハビリのため通院している。
小生は、送迎の運転手を務め、買い物のお供もしている。
包丁を使う「男の料理」はまだしていない。

以上