金井孜夫
アルツハイマーや物忘れについて関心が高まっている。
私も心配である。医薬品事業に関与していた者としては、病気たるアルツハイマーはターゲットとして関心大であるが、日常的には、病態よりは健常人の物忘れや記憶力低下の方が気になる。
病気は高度医学が正面から取り組んでいる対象で、詳細はその筋に任せて、ここでは素人が直接タッチ出来る日々の生活について覗いてみたいと思う。
そもそも脳細胞の数140億個は生まれた時にほぼ揃っていて生後は増加せず、20歳過ぎ位から毎日約20万個づつ減少、即ち死滅していくと言われている。
なのに、知能が低下しないのは、ハードたる脳細胞とは別に、ソフトたる脳機能賦活物質が年齢と共に潤沢に放出されるようになるからである。
このハードとソフトの機能の合計として60歳位までは脳機能は増強する。それ以後、即ち我々熟年層にあっては、正常老化として脳機能(認知機能)はゆっくりと低下していく。
低下していくことこそが正常と心得るべきで、記憶力等がゆっくりと低下していくからこそ、悪しきこと・悲しいことを忘れ、善きことのみ残り、人生の美しき穏やかな下山が楽しめると言える。
忘却は人間に備わった自己防衛手段であって、物忘れはその一部。熟年はこれを何とかしようともがくよりも、物忘れを楽しんでしまう年代ではないかとも考えたりしている。
とは言え、病態の認知症は怖い。
「認知症予防・支援マニュアル」より
平成17 年12 月
厚生労働省認知症予防・支援についての研究班
ちなみに、一つの単語を記憶するには脳細胞約2,000個が関わっており、脳細胞が少し位死滅しても問題はない。
むしろ、2,000個の脳細胞間に出来る回路に微弱電流がスムースに流れることが重要であって、これを助ける脳内物質が滞らないように脳内の状態を良好にしておく環境作りが大切である。
そのためには脳をよく使うこと、および筋力の増強が大切と言われている。
幼年にあってはテレビ・ゲームに興じるのではなく屋外で泥んこになって遊ぶこと、熟年にあっては散歩が大切となる。
高価な脳力増強パソコンゲームを買わなくとも、単に脚力を付ければ物忘れや記憶力減少を防げるのは、ものぐさな筆者とってはありがたい話ではある。
ところで、記憶に関しては事柄のインプットとアウトプットの両面を考慮する必要がある。
熟年はインプット力はあまり衰えてなく、アウトプット力が低下していることが問題である。何かのきっかけがあれば、昨日の朝食を思い出すことが出来る経験をお持ちと思う。インプットは出来ているのにアウトプットが出来ない例である。
我々はこのアウトプット力、すなわち思い出す力を高める必要がある。そのためには、1日に、家族でない3人と話をするとよいと言われている。家族は思い出しの対象とはならないようである。人に会いに外出することである。
そして、ときめくことである。そう言えば、最近異性に会ってもときめかなくなった。問題である。
先日、半世紀ぶりに開かれた郷里茨城県日立市の中学校のクラス会に出席した。しかしである。“気になる娘(こ) 思い出だけの 同窓会”となってしまった。これではドキドキのしようがない。どこか別の所に出掛けてみよう。
以上