堀尾 公亮
今NHK教育テレビで毎週月曜日午後9時35分から放映の趣味悠々「京都ほとけ出会い旅」をご覧になっておられるだろうか。仏師西村公朝さんによる京都のいろんなお寺の仏像をわかりやすく解説してくれている番組である。
近頃の殺伐とした世の中にあって、人々は心のよりどころを求めてか古寺巡礼やこの種の番組が多く又書店でも仏像の見方などが多く出まわっている。
浦田君もいろいろな寺を巡り仏像を拝観しているとのこと,私の場合はさらに一歩進めて仏像を自分の手で彫ってやろうと毎日少しずつノミをふるっている次第である。
そもそも私が彫刻をはじめたのは,中学二年のとき私の石膏彫刻が神奈川県立近代美術館に展示されたのがきっかけで、その後近所の薪置き場から手頃な薪をとってきて人物の胸像を彫っていたのが始まりである。
その後しばらく彫刻から遠ざかっていたが,50代に入って鎌倉彫を少々かじったがそれには飽き足らず中座していた。退職後しばらくしてふとしたきっかけで鎌倉山に住む仏師関 有雅先生に出会い弟子にしてもらった次第である。はじめのうちは仏足、仏手、仏頭,など部分しか彫らせてもらえずこのほど習い始めて四年目にして,本格的な地蔵菩薩立像を彫り上げた。
途中の習作とこのほど彫った地蔵菩薩の写真を添付するのでご高覧いただきたい。仏教は多神教なので仏の数も多くこの先何体くらい彫れるのか疑問であるが,一体ずつ着実に彫り進めていきたい。
習作
地蔵菩薩 (最新作)ところで仏像で思い出すのはイスラム原理主義者らによるバーミヤンの石仏破壊である。人類の貴重な遺産でありそれを破壊するのは大変な犯罪だと世の中は言うけれども,彼らに言わせれば一神教でありアラーの神以外を崇拝するのはけしからん,アラーの神は仏像のような偶像崇拝は認めない。だから壊すことが正義だと思っている。
しかもイスラム教は中東をはじめ中央アジア,東南アジアなどの比較的貧しい国々に流布していて独善的な米国などにあまり好感を持っていないので,富の象徴である世界貿易センタービルを爆破するに至った。米国は直ちに同盟国を集めて報復手段に出たが,いまだに成功していない。例えウサマ・ビンラデンを倒しても解決にはならないだろう。
このままでいけば21世紀はイスラム教国とキリスト教国との宗教戦争になるだろう。
その解決策は,多神教でしかも他宗教に寛大で和を重んじる仏教国(土着の宗教神道と混合した日本独自の仏教)日本が一方に加担することなく仲裁役を買って出るべきであろう。
仏像がらみであらぬ方向へ自説を展開してしまったが,とにかく仏像を観ていると、その表情の柔和さに心の安らぎを感じるのは私ばかりではないだろう。憤怒の形相をとっている不動明王でさえ大日如来の化身といわれ人々にエネルギーを与えてくれる仏様です。
また釈迦如来や阿弥陀如来など如来は悟りを開いて現世の人々を救済してくれるが,菩薩は現在修行中で弥勒菩薩は仏陀釈尊が入滅してから56億7000万年後に現れて人々を救済すると説かれている菩薩である。気の遠くなる話しである。
このように題材には事欠かないが,仏像を彫ることによって,仏教の奥深さの表層だけでも知ることができて心豊かになる今日この頃である。