宇宙の将来・終焉
gonegaga

退職してすぐ、放送大学に入学し、以来今日まで学生を続けてきた。卒業証書が欲しいわけでなく、ボケ防止と知的好奇心をくすぐってもらうという程度の期待で、学習はあまり熱心でない学生生活を送ってきた。

宇宙論に興味があり、宇宙に関する科目を聴講し続けて来たが、難解な理論や方程式は諦め、物語としての宇宙論を専ら楽しんできた。

最後の学期の中間で、レポート提出を求められ、「宇宙の将来・終焉」について、学んだことをまとめ提出した。そのレポートを基に、ホームページにしてみた。間違いや、勘違いがあることを覚悟で、ここに、掲載する。

現在、主流の宇宙観

宇宙膨張

インフレーション期を経た宇宙膨張の概念図
図の左端に時空の計量の劇的な膨張が描かれている
(2006年のWMAPのプレスリリースより翻訳)(Wikipediaより)

宇宙は、138億年前、無から始まり、ビッグバンにより膨張し、その後膨張を続け、60億年経過後、加速膨張に転じ、現在なお加速膨張が続いている。これが、現在主流の宇宙観のようである。

注:インフレーションが最初に起こり、その後ビッグバンが起きた。宇宙創成の10のマイナス44乗秒後に始まり、10のマイナス33乗秒後に終了。インフレーション前の大きさは、直径10のマイナス34乗cm、インフレーション直後、いわゆるビッグバンの時には、直径1cm以上になっていた。(これは、インフレーション理論の提唱者佐藤勝彦氏の言葉である。上記太字文字列「インフレーション」クリックでWebページ参照)

ビッグバン理論が発表されたのは1948年だが、我々が高校生だった1950年代半ばでは、宇宙は永遠で不変といういわゆる定常宇宙論が一般的だった。

銀河団が互いに遠ざかっていることは、1920年代にル・メートルやハッブルにより発見されていたが、宇宙が膨張しているという認識は一般的ではなかった。

注:銀河団が互いに遠ざかっているという発見をしたハッブル自身も、アインシュタインも、当時は、宇宙が膨張しているとは考えていなかった

ビッグバンはガモフが1940年代に発表したものだが、ガモフが、ビッグバン理論に付随して予言した宇宙背景放射が、1964年に発見されて、現在の宇宙観が固まった。

注:1964年は我々が大学を卒業し社会人になって2年目の年。まだまだ、定常宇宙論の方が馴染みやすかった。

宇宙背景放射の発見で、ビッグバン理論が知れ渡り、現在主流の宇宙観になったが、現在もなお、定常宇宙論の信奉者は少なからず居るらしい。

宇宙背景放射

「プランク」衛星が観測した宇宙マイクロ波背景放射全天画像(2018年)
(提供:ESA and the Planck Collaboration)

膨張を続けている宇宙の将来・終焉についての見方には、下記の4つが代表的なものという。

  1. ビッグ・フリーズ(ビッグ・チルとも)
  2. ビッグ・リップ
  3. ビッグ・クランチ
  4. サイクリック宇宙

ビッグ・フリーズ(big freeze) または ビッグ・チル(big chill)

現在の宇宙加速膨張が限りなく続き、その結果宇宙の温度が下がり続け、ほぼ絶対零度にまで達するというもの。宇宙の熱的死とも言う。

だが、宇宙がそのような終焉を迎える遙か前、40億年後には、アンドロメダ銀河と我が天の川銀河との衝突・合体が始まる。

天の川銀河とアンドロメダ銀河の衝突・合体のアニメーション(NASA制作)
上記太字文字列をクリックすると閲覧できる。

そしてその頃、太陽は燃料(水素原子核)の枯渇で、末期の状態になる。太陽は赤色巨星となり、地球はその中に飲み込まれる。

注:飲み込まれないという説もあるらしい。ともあれ、その時点では、おそらく、地球も人類も終焉を迎えているだろう。

その後、わが天の川銀河とアンドロメダ銀河の合体した銀河は更に近隣銀河との合体が続き、巨大な銀河に成長していく。

宇宙膨張により、天の川銀河や近隣銀河を吸収した銀河から遠ざかっている他の銀河との距離はますます広がり、1000億年後には、隣の銀河との相対速度が光速を超え、隣の銀河は見えなくなる。

更に100兆年後には、すべての恒星が、その寿命を終え、暗黒の世界になる。

更に10の34乗年後には、陽子崩壊が予想される。その時宇宙は、巨大ブラックホールのみとなる。

注:超新星からのニュートリーの検出や、ニュトリー丿振動の検出で二人のノーベル賞受賞者を生んだカミオカンデ、その当初の目的は「陽子崩壊の観測」であった。これはまだ観測されていない。

ブラックホールもホーキング放射により衰退していくが、大きいブラックホールほど寿命は長く、10の100乗年後に残っているのは太陽の1兆倍以上の質量のブラックホールだろう。他には、電磁波が残っているかもしれない。

この仮説が、現在、最も、蓋然性が高いと考えられる宇宙の終焉予測のようだ。

ビッグ・リップ(big rip)

21世紀に入ってからの観測で、宇宙は、通常の物質が5%、暗黒物質(ダークマター)26.5%、残る68.5%が暗黒エネルギーだと、同定されている。

つまり、宇宙は正体不明のものがその95%を占めるというなんとも奇怪なものである。

注:だが、暗黒物質や暗黒エネルギーがどのようなものなのかは全くわかっていない。それがないと観測事実をうまく説明できないことから、あるはずだということになっている。

宇宙膨張

宇宙膨張の概念図(Wikipediaより)

通常の物質や、暗黒物質は、引力を持っているが、暗黒エネルギーは引力ではなく、いわばマイナスの引力である斥力を持っており、これが、銀河団を互いに、加速的に遠ざける原因になっているという。

注:2017年、相対性理論に抵触せず、暗黒エネルギーを必要とせずに宇宙の加速膨張を説明できるという説が発表された。まだまだ、興味深い展開が起こりそうである。

宇宙膨張を加速している暗黒エネルギーのエネルギー密度が時間と共に増加していると仮定した場合、暗黒エネルギーはいずれ自然界を構成する4つの力をすら上回り、宇宙全体が素粒子レベルでバラバラになってしまうという予測。

注:4つの力とは、重力、電磁力、弱い力、強い力。

重力で引き合っている銀河団が重力で維持できなくなり、我が銀河系も重力で支えきれなくなり、太陽系もばらばらになる。最後には、原子の崩壊まで行き宇宙が消滅すると言う予測。

しかも、宇宙の熱的死より、もっと早い、2-300億年でこれが起こるという予測で2003年に発表されたもの。

エネルギー密度の時間的増加が、確認されておらず、可能性はあるとしても、1000億年後より前には起こらないだろうと見られている。

ビッグ・クランチ(big crunch)

宇宙の膨張がいずれ止まり、収縮に転じ、現在の宇宙が発生した時点の状態に戻ってしまうというもの。

暗黒エネルギーが物質に変化し重力が宇宙膨張を減速させない限り、起こらないとみられる。

サイクリック宇宙(cyclic universe)

ビッグ・クランチのあと、再び宇宙の誕生が繰り返されるという説。

真空崩壊(vacuum decay)

上記4つの、大変長い宇宙寿命仮説とは異なる、何時起きてもおかしくないという異色の仮説がある。真空崩壊である。

注:小生には理解できないものなので、以下、Wikipedia情報からの、小生の勝手な要約である。

場の量子論における真空は最低エネルギー固有状態。近似的に真空とみなせる準安定状態が偽の真空。偽の真空はトンネル効果による遷移を経て真の真空へと崩壊する。

偽の真空が相転移するこの現象を「真空の崩壊」と呼ぶ。

真空の崩壊が宇宙のどこか1点でも発生した場合、ポテンシャルの差による膨大なエネルギーが生ずる。

それによって、周りの偽の真空も連鎖的に真の真空へと相転移する連鎖反応が光速で進行する。

これに触れた全ての構造は一瞬にして崩壊してしまう。

光速で進行するので、実際に真の真空に出会うまで、観測者が真の真空を知ることは不可能。

真の真空が観測不能である以上、それは既に発生しており、人類が住んでいる場所の近くにまで迫っている可能性も、否定できない。

これについては、このYouTube動画( 左太字をクリックして閲覧)が参考になる。