インターネットメールマガジンで 「何故?幸福度一位の都道府県は福井県」という記事を見つけた。
我が千葉県は何位なのか、どのような指標で順位を決めるのか気になった。
この「47都道府県幸福度ランキング(2016年版)」は、日本総合研究所が日本ユニシス総合技術研究所の協力を得て2014年以来実施しているものだそうだ。
まず順位だが、下図のようになっており、1位が福井県、2位が東京都、3位が富山県、以下長野県、石川県と続く、我が千葉県は16位である。
どのような指標でランク付けしたのかだが、下図のような指標だという。
注:上の画像はいずれも日本総合研究所のホームページより
指標の分野別ランキングについては、このページに詳しいデータがある
- 正規雇用と非正規雇用の格差 福井県は、「正規雇用者比率」が全国3位
- 障碍者雇用率 全国4位
- 教育分野で 学力 全国2位 不登校児童生徒率の低さ 2位 社会教育費支出 3位
- 社会教育学級・講座数 3位 余裕教室活用率 1位
- 子どもの運動能力 1位
- 女性労働力人口比率 1位
- 自殺死亡者数の低さ1位
- 平均寿命 2位
この調査以前は、政府が、1992年以来「豊かさ指標(新国民生活指標)」という調査を行っていたが、6年連続で最下位となった埼玉県の抗議で1999年に調査が廃止されたという。
その調査を引き継ぐ形で、「47都道府県幸福度ランキング」が始まったということらしい。
この調査は、日本総合研究所が2014年から始めたものだが、それ以前の政府が行っていた「豊かさ指標」でも、総合1位は常に福井県で、4半世紀にわたり「最も幸福な都道府県」であり続けているという。
こうなると、当の福井県民が自ら幸福と感じているかどうかが気になってくるが、文部科学省が、2010年に行った 「地域の生活環境と幸福感についてのアンケート調査」では、福井県はこの、謂わば、主観的幸福度では、35位だ。
幸福度ランキングで上位の富山県や石川県も、それぞれ、26位・37位と振るわない。
逆に、客観的データでは下位にランキングされることの多かった近畿、四国の府県が、主観的幸福度では上位にきている。(下図参照)
客観的幸福度と主観的幸福度のズレ
注:「国民総幸福量(GNH)にも表れない実感は?」より
客観的幸福度なるものの各種指標で、他と比べて高い得点を得たとしても、そこに住んでいる人には、当然というか、普通のことで、そのことに幸福感を得るということは少ないのだろう。
むしろ、不満に感じていることが、主観的には、不満度が増幅され、幸福とは思わないということになるのではないだろうか。
似たような調査は、国連が、世界規模で行っており、「世界幸福デー」に定めている3月20日、世界の155カ国を対象にした2017年世界幸福度ランキングを発表した。
調査の指標としては、国民の自由度、1人あたりの国内総生産(GDP)、政治・社会福祉の制度などが使われているという。
世界1はノルウェー、2位デンマーク、3位アイスランドと続き、日本は51位となっている。主だった国では、米国14位、ドイツ16位、英国19位、イタリー48位、ロシア49位、中国79位となっている。
国連の報告書では、「上位4カ国は、国民の自由度、政治など幸福に関係する主要なファクターの全てで高評価を獲得した」とあるらしい。
国民総幸福量(GNH)を提唱し、そのための調査で国民の97%が幸福と答えたということで有名なブータンは、この国連調査では、97位。調査指標が大きく異なるためであろう。
因みに、国民総幸福量(GNH)の指標は下図のようなものとのこと。
注:外務省のホームページより
ブータンのことが気になったので、Wikipediaで調べてみた。下記は、Wikipediaからの転記:
- ブータンは、1972年代にワンチュク国王(筆者注:前国王)が提唱した国民総幸福量(いわゆる幸せの指標、GNH (Gross National Happiness))の概念に基づき、「世界一幸せな国ブータン」として、特にGDP/GNP増加を主眼としている先進国から注目されている。
- ただしGNH達成はいまだ目標の段階にとどまっており、2010年の調査で示された平均幸福度は6.1と、日本の6.6を下回っている
「国民の97%が幸福と答えた」ということや、「世界一幸せな国」という評価と日本を下回るGNHというWikipediaの記事に違和感を感じる。
やはりWikipediaに下記の記述があった。
- 2005年には、ブータンで初の国勢調査が行われた。アンケート項目は数百に及ぶが、中で特徴的なものは次のようなものであった。
- 【満足度】自分で幸せだと思うか、幸せになるにはどのようなことが必要か?
- 【精神面】自分自身がスピリチュアルだと思うか?お祈りや瞑想をするか?
- 【自殺について】自殺を考えたことがあるか?実行しようとしたことがあるか?
- 【環境に関する教養】身近な植物の種に関する知識、水路のメンテナンスが重要だと思うか、自分で植林をするか。
- 【Cultural literacy】地域の祭り、祭りの意味、祭りで行われるダンスや歌の意味の知識について
- このアンケートは「非常に幸福 (very happy)」「幸福 (happy)」「非常に幸福とはいえない (not very happy)」の3択で、回答の集まりやすい中間の選択肢が偏ったものになっており、また「どちらでもない」といった選択肢が用意されていないものであった。
2010年からは0-10までの11段階評価による調査に改められている。
【信用感】ブータン人/近所の住人をどれだけ信用しているか?
「国民の97%が幸福」という文句は文字通りには受け取らない方が良さそうだ。
ブータンについては、これまで平和な、のどかな国とのイメジをぼんやりと持っていたが、隣国インドや中国、植民地主義の頃の英国とは、結構衝突があったらしい。
今もなお、中国とは国境線設定の交渉が続いていることや、南部ネパール系住民の難民化の問題があることに驚いた。
幸福度について、あれこれインターネットサーフィンをやっている内、「世界幸福度ランキング上位13カ国を旅してわかったこと」と題する書籍があることを知った。
マイケ・ファン・デン・ボーム (著), 畔上 司 (翻訳) 集英社
「幸福」に興味を持ったドイツ人の著者が、「世界幸福度ランキング上位の13カ国」の国々を旅して、幸福の理由を取材して纏めた本だそうだ。読んでみようと思う。