豆腐よう

遠藤興輝


娘が、沖縄の土産に「豆腐よう」をもってきてくれた。

実に珍味である。

「豆腐よう」を始めて口にしたのは、昨年11月。ある方から、おみやげに頂いた。妙な食べ物だなと思ったが、食べてみてそのうまさに感激した。「沖縄のブルーチーズ」と思った。ブルーチーズは塩味だが、「豆腐よう」はほのかな泡盛の香りと共に甘い。

以来、大好物となり、沖縄好きの娘が沖縄に行く都度土産に頼み、これで3回目の「豆腐よう」である。

豆腐を一口大に切り、泡盛と紅麹の漬け汁で発酵させ、半年近く熟成させたものだという。「豆腐よう」の類は、アジア各地にあるらしいし、沖縄の「豆腐よう」も、ルーツはこれらに行き着くらしいが、沖縄のものは泡盛につけ込むというのが独特だとのこと。

ただし、豆腐といっても、沖縄の豆腐は本土のものと作り方も違うし、大きさも1丁が1キロもあり、保管も、水の中に漬けるのではなく棚の上に置くのだとか。「島豆腐」とよばれるこの豆腐で「豆腐よう」は作るとのこと。

食べ方が少々変わっていて、さいころのような「豆腐よう」を、爪楊枝や箸で、ちびちび削って食べる。これが実に美味。

ウニとチーズを合わせたような味という表現を見つけたが、言い得て妙。最高の肴である。今や、ブルーチーズとならび大好物となった。

沖縄の人は、泡盛に一番合うと言って憚らないらしいが、日本酒にも良く合う。

しばらく、「豆腐よう」をつまみに晩酌が楽しめる。

会社勤めの頃、4年位、3ヶ月に一度は沖縄に出張していたが、不思議なことに、一度もこの珍味に出会わなかった。

ちなみに、「豆腐よう」の「よう」は、漢字で、食偏に羔を旁としたもののようだが、パソコンの漢字変換ではJIS第4水準まで使っても見つからなかった。