甘い酒

遠藤興輝

甘い酒なんて...とつい最近まで思っていた。

好きな酒は、日本酒と赤ワインだが、今でも、日本酒の甘口は好まない。

例外は、カンパリである。

会社勤めの頃、あるパーティーの席で、社長が、赤いカクテルを飲んでいるのを見て、「それは何ですか」と訊いた。

「カンパリソーダと言うんだ。胃に良いと聞いてね。最近これにしてるんだ」とのお応え。

それで試しに飲んだ。ソーダで割ってあるのと、苦みがあるためか、甘い酒だが、悪くないと思った。

以来、時折、カンパリとソーダを買ってきて、専ら食後酒として楽しむようになった。これが、リキュールを楽しむようになったきっかけである。

長女が、学生時代に、アメリカにホームステイをし、そこでカルーアミルクなる飲み物を覚えてきた。カルーアというコーヒーを原料とするリキュールをミルクで割ったもの。

酒と言うより、アルコール風味のあるミルクコーヒー。不味くはないが、酒として楽しむ気にはならなかった。

因みに、カルーアはメキシコのリキュール

海外出張の折、シェリーを免税店で買ってみたことがある。飲んだことはなかったが、シェリーという名前を聞き覚えていたから物珍しさで買ったもの。家に持ち帰って飲んで、その甘いのに驚いた。甘い酒とは思っていなかった。

その後、ある人から、ティオぺぺを紹介され、これは美味いと思った。勿論甘くない。シェリーにもいろいろあるということを知った。

シェリーはスペインのアンダルシア地方ヘレスという町と、その周辺で造られているワインで、そこで造られている物以外はシェリーとは言わないのだそうだ。後述のポルトワインが、ポルトで作られたもの以外ポルトワインといわないのと同じだ。

普通のワインとは異なり、ブランデーなどで、アルコール濃度を高く(酒精強化)しているらしい。これもポルトワインと同じだ。

1999年ポルトガルに行ったとき、最初に泊まったポルトのホテルのチェックインで、いきなりポルトワインのグラスサービスがあった。

ポルトワインのご当地故のサービスとは分かったが、甘いワインだなとの印象しか持たなかった。

観光中、ポルトガル人の若い女性ガイドに「良いポルトガルワインの銘柄は?」と訊いたら、即座に「ポルト」という。あんなに甘い酒をか?と思った。有名なワインではあるが、甘い酒に抵抗があり、買わなかった。

因みに、ポルトワインは、ドウロ川上流のドウロ地方で作ったワインを河口のポルトの街まで船で運び、ここで、酒精強化(アルコール濃度を高め)し熟成したものだそうだ。甘いが砂糖は一切使わない。

むしろポルトワインの原酒であるドウロワインが美味いと思ったのだが、日本では余り見かけず以来飲んだことがない。

ポルトガルに行った際、大西洋のマデイラ島も訪ねたが、ここのマデイラワインもポルトワイン同様酒精強化した甘いものだ

ポルト、マデイラ、シェリーの3種を世界3大酒精強化ワインというのだそうだ。

これも会社勤めの頃だが、ある方にアイスクリームにリキュールを掛けて食べることを教わった。これが実に美味かった。リキュールが何だったかは覚えてないが、勿論、甘いものであった。

以来、バニラアイスクリームに甘口のシェリーを掛けるのが好物となった。

最近は、アイスクリームの売り場に、この種の宣伝をしているのを見かける。小生が見たのはカルーアを勧めていた。

ベイリーズというアイルランドのリキュールの小瓶を何かの景品でもらった。これも大変甘い酒である。

アイリッシュウィスキーにクリーム、スピリッツ、チョコレート、コーヒー、バニラなどを加えたものだそうだ。

アイリッシュコーヒー(コーヒーというよりもカクテル)という伝統的飲み物をリキュール化したものだそうだ。生産開始が、1974年というから30年そこそこの歴史の新しいリキュールだ。

アイリッシュコーヒーといえば、30代の頃仕えた外国人上司が、アイルランド系アメリカ人で、彼の家でのパーティーに招かれ、彼自らが作ってくれたアイリッシュコーヒーをご馳走になった。それが大変美味かった。

以来、ホテルやバーなどでアイリッシュコーヒーがあると注文してみるのだが、彼の作ってくれたものとは違う。

レシピーを教えてくれたのだが、アイリッシュウィスキー以外にバカーディラムを使うと言ったこと以外覚えていない。聞いたときしっかりメモしておくべきだった。

ベイリーズだが、アイスクリームに試してみた。余り合わないなと思った。しかし、その後、かのハーゲンダッツの製品に、「ベイリーズ」と冠したアイスクリームがあると知った。プロがそういうのを作るのだから、案外合うのかも知れない。もう一度試して確かめてみようと思う。

このベイリーズを、食後に小さなグラスでちびちびやっている内、甘い酒も悪くないと思うようになった。

その後試したもので、これはアイスクリームに合うと思ったのは、フランスのリキュールカシスである。これまで、アイスクリームには、甘口のシェリーかポートワインを専らとしていたが、これまで試したもののなかでこのカシスが一番アイスクリームに合うように思う。

カシスとは黒スグリという植物の実だそうだ。これを原料に造るリキュールだが、砂糖を添加するらしい。

カシスも、食後にちびちび啜って楽しんでいる。

カシスのおかげで、他のリキュールもアイスクリームや、食後酒に試して見ようという気になった。

最近、グランマルニエという、リキュールを試した。コニャックとハイチのビターオレンジを組み合わせたリキュールだそうだ。
 
アイスクリームには、リキュールの香りが勝ってしまい、余り合わないと思う。むしろ、生でちびちびやる方が美味い
 
一般に、「リキュールとは蒸留酒に果実やハーブなどの副材料を加えて調製した酒のこと」(ウィキペディア)だそうだ。
 
日本では、不可解というか、ばかばかしいというか 酒税法上、「酒類と糖類その他の物品(酒類を含む)を原料とした酒類でエキス分が2度以上のもの(清酒、合成焼酎、しょうちゅう、みりん、ビール、果実酒類、ウイスキー類、発泡酒、粉末酒を除く。)」と定義されているらしい。(ウィキペディア)
 
そういえば、缶酎ハイの缶に確かリキュール類と書いてある。
 
所謂リキュールのイメージとはかけ離れた定義をし、しかも外来語で定義するというのが気に入らないし腹が立つ。

先日、みりん製造の蔵元を外国人が観光するテレビ映像があった、このみりん、大変美味いもので、外国人もリキュールの感覚で土産に買って帰ると言っていた(普通の意味でリキュールではないだろう。日本の酒税法上もリキュールではない)。そんなに美味いみりんなら、試してみたいと思う。

このみりんをアイスクリームに掛けたら、どのような味がするだろうか。

娘が、マカオに旅行し、土産にポルトワインの老舗、オフリーのワインを買ってきてくれた。これがまた実に美味い。アイスクリームにも合う。今はこれを楽しんでいる。