表題
遠藤興輝

モーツァルトは小生も大好きな作曲家である。

モーツァルト

オーディオに凝った頃、モーツァルトの全曲のレコードを集めようと考えたこともある。

最近、「そこに モーツアルトが いたから」と題する本(エリック=エマニュエル・シュミット著)を読んだ。

著者が、モーツァルトに手紙を送る形の文章で、その中に、次のような文章があった。

親愛なるモーツアルト、

先日の夜、ぼくはある古生物学者に出会った。きみの遺骨を調査したことがあるっていうんだ。共同墓地の墓穴から引きだされ、何世紀ものあいだ丁重に保管されてきた頭蓋骨が、実際にきみのもので、DNA鑑定の結果、身元が確認された、という話に得心がいくと、ぼくは好奇心に駆られてたずねた。

「では、どこか変わったところがあるんですか、モーツアルトの脳には?」

「彼の脳について、特に問題になることはありません。その代わり……、いや、あなたにはショックでしょう.....」

「大丈夫です、おっしゃってください。」

「いや、気分を害されますよ.....」

「おっしゃってください。」

「そうですか、もしあなたが彼の歯の状態をごらんになったなら.....ひどいものです!」

本当かと思った。

そこで、インターネットで情報を探した。

ある、有る!

しかも、モーツァルト生誕250周年の2006年を前に、モーツァルトのものと言われる頭蓋骨の真贋を確かめるプロジェクト実施され、その結果が2006年1月に発表されている。同年6月28日には、NHKテレビでも放映されたらしい。

こんなビッグニュースを全く見逃していたことを実に残念且つ情けなく思う。

一連の経緯を追うと下記のようになる。

  1. モーツァルトは1791年に亡くなった。経済的困窮から注共同墓地に埋葬されたため、彼の遺体の正確な位置は定かでない。

  2. 注:経済的困窮というのが一般的だし、そう記憶していたが、「当時の習慣で」とするインターネット情報もある。

  3. 真贋論争

    そもそも、1801年に共同墓地から掘り出されたときから、本物かどうかの疑いは持たれていた。

    頭蓋骨から顔の様相を割り出すスーパーインポーズ法でモーツァルトだと認定され、保管されているらしいが、それで真贋論争が終結したわけではない。

  4. DNA鑑定プロジェクト

    生誕250周年を間近にDNA鑑定で真贋に決着をつけようというプロジェクトが2004年10月に発表された。

下記は、インターネットで公開されたニュースである。

オーストリアのウィーン医科大学教授らの研究チームが、モーツァルトの生地ザルツブルク市当局の許可を得て、同地に眠っていた父親や姪の遺骨を掘り出した。

これらの遺骨のDNAを、同地の国際モーツァルテウム財団が保管する頭蓋骨のものと比較し、結果を生誕250年の2006年に発表する計画だ。[読売新聞WEB版2004/10/28/21:13]

鑑定の対象になったものは

結果は後述するが、このデータと最初に引用した本の文書との関係が今一つすっきりしない。

小生が読んだ本は、原著が2005年に出版されている。ということは、DNA鑑定プロジェクトの発表(上記新聞発表は2004年10月28日)とほぼ重なる頃、あるいは、それ以前の執筆だろう。

上記プロジェクトの結果が得られる前であることは間違いない。

その時点で、「何世紀ものあいだ丁重に保管されてきた頭蓋骨が、実際にきみのもので、DNA鑑定の結果、身元が確認された」となっている。

もし、それが事実なら、改めてDNA鑑定など必要ないはずだ。

上記プロジェクトとは別に、著者の会った古生物学者あるいはその知人がDNA鑑定をしたということだろうか。

もしそうなら、その鑑定結果は、公表されなかったか、正しいものとして認められなかったと言うことになる。

て、上記プロジェクトのDNA鑑定の結果だが、下記のようになったという

ということで、鑑定の結果、謎はさらに深まってしまった。

「モーツァルト一族としてモーツァルト家の墓に埋葬されている人々は一体誰なのか?」と疑問が呈せられているが、本当におかしな話ではある。

また、読売新聞にある、父親の遺骨というのは、モーツアルト家の墓にはないのだろうか。あれば、当然、DNA鑑定の比較対象になったはずだと思うのだが.....

2年近くも前のニュースに今頃、驚いている間抜けな話だが、ともあれ、気になる上に腑に落ちない。


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