アルツハイマー騒ぎその後

遠藤興輝

2ヶ月に一度の定期内科検診があり、病院に出掛けた。

今回は、「アルツハイマーの可能性について、医者に相談して見ろ」との友の警告もあり、いつもとは違う気持ちで出掛けた。

いつもの通り、「何か変わりありますか?」との質問。

「体調は特段の変化はありませんが、実は...」と、2連続で約束を忘れたこと、友人にアルツハイマーを心配せよと警告を受けたことを述べ、何かチェックの方法はあるのか訊ねる。

「ない訳ではありませんが...」と笑いながら、「立方体を影の稜線を点線にして描いてみなさい。もう一つ、時計を文字盤も含め10時10分になるように描いてみなさい」と言う。

二つとも見事に描いてのけた。

「こんなことで、分かるのですか」と訊けば、「アルツハイマーの人はこんなことができなくなるのですよ」という。そして、「アルツハイマーの心配をするより、忘れない工夫を考えなさい」と笑われた。

友にアルツハイマーを心配せよと言われたとき、カミさんもそばにいたのだが、「その可能性あるかも知れないけど、今更始まった忘れっぽさでもないし...」と宣い、さほど深刻に心配している風がない。

カミさんが少しでも心配そうな顔でもすれば、こちらも気になったと思うが、そうでもないので、「ひとつことに集中すると他が見えなくなるという度合が、俺の場合は強いということだ」と自ら納得し幾分自己嫌悪を和らげていたのだが、医者の言葉に今一度、安心の度を強めた。

しかし、完全に安心した訳ではない。

忘れ癖については、我ながら兎に角ひどいと自覚している。

 

会社勤めの頃、定期券を持たないで家を出たことは数え切れない。「ハトガマメクテパ(ハンカチ、時計、がま口、マッチ、眼鏡、櫛、手帳、パス(定期券))」という呪文を覚えたが、それを唱えることを忘れた。

出かけるときには必ずかみさんに『忘れ物はない?』と声をかけられる。『忘れ物が分かっていれば忘れ物ではない』などと悪態を付いているが、それでも忘れる。

手に持って出ていくと何処かに置き忘れて帰ってくる。デジカメをどこかに置き忘れてなくし 、現在のものは2台目。眼鏡や補聴器はそれぞれ二つなくした。傘などは、かみさんはもう買ってくれない。
かみさんは、以前より「もう、病気ね!」と言っている。

昔からとはいえ、兎も角忘れっぽいのはかなり酷いのだし、それが進んで、アルツハイマーに近づいているかも知れぬと一抹の不安は感じたのだから、医者にそんな心配より忘れない工夫をしろといわれたからといって、万歳を叫ぶ気にはなれない。

とはいえ、取り敢えず、医者が言うよう、忘れない工夫せねばならないが、これだけ長年直らないのだから、そう名案が浮かぶ訳でもない。
 

記号

約束のある日は、その時間が近づいたら、気になって身を乗り出してしまうようなことには手を出さない

記号

何とはなし暇をつぶすようなこと、例えば、机の上の整理、パソコンゲーム、雑誌などで時を稼ぐ

 

というのが今思い浮かぶ案である。妙案がある人がいたら、伝授してもらいたいものだ。
 

 

前回のものも含め、この話題をブログに載せたら、いくつか反応があった。

 

まず、カミさん:

「忘れ癖は、結婚したときからだから、アルツハイマーと言われても、そうかなあ?という感じ」という、一見冷静な反応。

 

所が、仕事も家庭も順風満帆だった中年男性が突然、若年性アルツハイマー病に襲われ、人生のすべてが一変していくという実話を、「明日の記憶」という映画に製作・主演した俳優、渡辺謙がテレビ出演したのを見て、「これは、観る!」

やはり、先を心配してるのかも知れない。

次いで、小生が主宰するクラブメンバーで、看護士の女性:

多くの人は意欲的に生きている方をみれば大丈夫よ・・・と励ましてくれますがそれは現時点のこと。その先は神のみぞ知る。

 

今は心配のみですが現実に将来は認知症コースと宣告された時耐えられますか。
また痴呆が進んだとき自分がかわいいボケちゃんならいいけど反対タイプなら...
 

もちろん完治は現段階では無理ですが進行遅くする薬はあります。が、今は宣告が怖くてとても受診する勇気・・・ないよね〜。でも医学の世界は日進月歩 薬の開発にしのぎ削ってますから。早期発見・早期治療然り。でも足踏みしてしまう?

かなり本気で助言してくれている感じ。

同じくクラブメンバーの女性から:

アルツハイマーテストOKでよかったですね!誰しもいちばんなりたくない病気です。

 

私は時々、コムスンというグループホーム(痴呆症専門)に叔母の見舞いに行きます。すると、お客が珍しいのか、皆が寄って来て、私が「こちらは私の叔母、私は姪なんです」と言うとそばの人が難しそうな顔をして、「私は何なんでしょう?」と聞くのです。笑いがこみ上げるよりもなんとも悲しい気持ちになります。人としての会話が続かない空しさを味わいます。

 

叔母には昔のことを思い出させるようにがんがん話をします。30分もすると、ふうっと言ってとても疲れるようです。脳が働き過ぎたのでしょう。

 

忘れない対策はマジックで、B5ぐらいの紙に書いて、作業中にも必ず見えるとこに張っておくといいと思いますが...。私はそうしています。

 

それから、常に先の先の行動を考えると案外ノーミスでいけますね。ご参考まで...。

作業中も必ず見えるところに張っておくというのは効果ありそうな気がする。しかし、やはり、そうすることを忘れそうな気もする。

 

「常に先の先の行動を考えると...」というのは小生の場合役に立たない。何かをやりながら、直ぐ次のことを考えるため、今やっていることが何か抜けてしまうのだ。

このほか、酒井君から才萩会ホームページの掲示板「語ッぺし」に意見を頂いた。