Oct.21, 2001
鮎川宣博
2001年9月11日(Tue)は、アメリカ合衆国にとって忘れ得ぬ日になりました。
その日朝9時前に、私は女房と彼女の母が日本に帰るため Cleveland Air Port の NW 搭乗口で待っていました。9時半前にフライトが遅れるというアナウンスがあり、その内何時になるか判らないと云うことになったので、Detroit で日本行きに乗継ぎできる他社のフライトを取るよう搭乗カウンターに交渉に行った。ところが、どこも飛んでないという。全米の空港が閉鎖されており、NY の WTC に飛行機が突っ込み、テロらしいと云うことだった。
すぐにコンコースの TV を見に行ったら WTC が燃えており、すぐ2機目が突っ込む映像が映った。やがて一つが崩壊した。
その時アナウンスがあり、乗客は全員空港外に出るよう指令が出た。チェックイン・カウンターで翌日のフライトを取り、スッタモンダのトラブルの末荷物を受け取り、Chardon(シャードン)の我が家まで帰った。
その日夕方、私は Detroit に出張する予定になっており、翌日の Cleveland−Detroit のフライトも怪しいので二人を一緒に車で連れていった。翌朝 NWに電話すると飛ぶというので空港まで行くとやはり欠航、というより全米の空港がクローズされいつ再開されるか不明とのこと。結局3晩 Detroitに泊まり、大混雑の中14日(Fri)午後、二人は無事日本へ発つことができました。
その間、83歳になる義母は、異国の地で4時間近くも車で移動したり、アチコチのホテルに泊まったりで、体力的にも大変で精神的にも参るのではないかと心配していました。
ところが、日本の息子への電話で「あなたたちが絶対できない経験を、いまお母さんはしているのよ」と笑いながら話しているのを聞いて、安心したり驚いたりしたものでした。
終戦後、満州から乳飲子(我が女房)を含め3人の子供を連れて日本に引き上げ、戦後のドサクサを生き抜いてきた“日本の母親”の強靱さに、深く考えさせられるものがありました。
11日のフライトで Detroit 到着予定のT自動車の技術者は、カナダの Winnipeg に着陸後そこから動けず面会不能。週が開けて月曜日(17日)に電話が入り、週末にアメリカに入れたがすぐ帰国せねばならないと云うことで、火曜朝再び Detroit へ。カナダ入出国、Detroit での入国手続きにそれぞれ6時間かかったとのこと。
事件直後、日本の自動車各社では米国への出張を全て中止、出張者はすぐ帰国の命令が出た。ところがT社は「情勢を見て可及的速やかに帰国せよ」ということだったが、N社は「とにかく即日帰国せよ」ということで、N社員が「全米の空港が閉鎖されているのにどうやって帰国するのだ。T社との情報収集力の差か!」と云っている話を聞き思わず笑ってしまった。
犯人グループのメンバーがカナダから入国したと云うことで、事件後はカナダとの国境で検問が極めて厳しくなり、通過に4〜6時間(最もひどいときは半日)かかるためアメリカからの部品が届かず、カナダのH社は稼働を停止、T社他の全社が数十%の操業ダウンという状況でした。
NY の殉職消防士に対し、かなりの期間、街では消防署員が長靴を持って交差点の赤信号で募金を呼び掛けていました。
その後、アフガンアタック、炭疸菌テロと続き、この1ヶ月以上 TV はこのプログラムばかりです。毎日々々、どのチャンネルをひねってもこの報道の渦です。最初、”America under Attack”、”Attack on America” などのタイトルが出ていましたが、その後 “New War” となり、“America Unites” が標語となって衣服や車に大々的に張り付けられ、最近は ”America Strikes back”、”Attack on Terror”、”Strike against Terror” から ”America’s Changing World” などのタイトルがTVに出てきます。勿論 ”Anthrax” は誰も知るところとなり、我々もやや危ない状況に置かれているわけです。次に懸念される”核攻撃”や”原子力発電所へのテロ”などは、かなり近いところに原子力発電所があるので人事ではなくなります。
そんな中で、仕事に忙しく、ゴルフやショッピングに忙しく、はたまた旅行の計画を立てたり、美味いものを探したり、一寸矛盾するところがありますが、この先それ程長くないアメリカ生活をエンジョイすべく元気にやっています。大リーグは、Ichiro が大々的に取り上げられています。新人王とMVPは間違いないでしょう。でも今日 Yankees との第4戦で、大魔人がサヨナラホームランを打たれて負けた。後がない。残念ながら Yankees は強い!
Cleveland の30マイル東郊外にある Chardon の田舎町は、今美しい黄葉の最盛期が過ぎつつあるところです。昼の気温は20から12゚C、最低気温は4゚Cくらいです。もう2週間くらいで全てが枯れ木の林のようになってしまいます。冬近しの感じです。
皆さんにはいろいろご心配をいただきましたが、元気にやっておりますのでご安心下さい。