表題
安谷屋 武志
  1. 新型エネルギー車時代の幕開け

    1. HVの登場

    2. 戦後の⽇本経済は⽬覚ましい発展を遂げたが、中核をなすのが⾃動⾞産業である。

      図 1 にその様⼦を伝えるが、ʻ90 年頃まで直線的に国内⽣産を延ばし、⼀部の海外⽣産と合わせて 1700 万台程度になっている。

      その後国内⽣産はやや低下し 1000 万台くらいを保っているが、全体としての伸びは海外⽣産に頼っているという形である。

      その頃までは⾼度成⻑時代で⽣産量優先の時代だったと思われる。

      ⽇本の⾃動⾞⽣産台数の推移 1)
      図 1 ⽇本の⾃動⾞⽣産台数の推移1)

      しかしその後は量より質の時代となり、より優れたものを造らないと売れない時代になる。

      ⾃動⾞では燃費の向上、防錆⼒強化、⾞体の軽量化、排気ガス浄化などがある。ʼ80 年代というと燃費と防錆⼒強化の要望が強かったと思われる。

      そこで燃費の点から真っ先に登場したのがハイブリッド⾞である。

      ʼ97 年トヨタより「プリウス」として世界初の量産ハイブリッド⾞が発売された。その後ʼ99 年にホンダより「インサイト」が発表された。

      まさに⽇本の新技術⾞独占の始まりである。

      ハイブリッド⾞(HV)とは内燃機関(エンジン)と電動機(モーター)を備えた⾃動⾞で、エンジン効率の悪いスタートアップ直後や渋滞時などの間を予め充電して置いた電池で⾛⾏するというもの。

      最近の公表結果を図 2 に⽰すが、通常のガソリン⾞の 1.7 倍程度優れることが分かる。勿論、両動⼒源を持つのでその分重くなるし、⾞室空間も犠牲になる。⾞両コストも上昇する。しかし燃費が良い分排ガスが少なく環境(脱炭素)に優れているといえる。

      最近の⾃動⾞の燃費⽐較 2)
      図 2 最近の⾃動⾞の燃費⽐較2)

    3. EVの出現

    4. その後に登場したのが電気⾃動⾞(EV)である。

      2009 年に三菱⾃動⾞より「三菱・i-MiEV」が、2010年に⽇産より「⽇産・リーフ」が⽣産開始された。

      EV が普及したのは確かに 2000 年以降であるが、実際はガソリン⾞より古く 1800 年後期から英国で出ていたようである。しかし⻑時間運転に耐えるものではないため、ガソリンエンジン⾞に切り替わる。

      1980 年代後半より CARB(カリフォルニア⼤気資源局)のゼロエミッション規制で EV が注⽬されるようになる。

      丁度期を同じくしてニッケル⽔素電池やリチウムイオン電池など⾼性能電池も完成して きたので⽇本⾞が先陣を切った。

    5. FCVの登場

    6. 2014 年トヨタより突然燃料電池⾞「ミライ」の発表あがり、世界を驚かせた3)

      環境問題が問われていた時期、いずれ発表があるとは思われていたが、これほど早く発表があるとは思われなかった。

      しかも価格も 700 万円程度といわれた。それまでいわれた 1.5〜2.0 億円とは異次元の価格である。これはニュース性も⾼く、国内では官⺠⼀体となって「究極のエコカー」、「⽔素時代元年」と盛り⽴てられた4,5,6)

      また経済紙、科学誌などもなども⼀⻫にこの快挙を称えた。

      ところが年明け早々に開催された北⽶国際⾃動⾞ショー(デトロイトショー)では、ダイムラーや GM、ボルト、VW、現代⾃動⾞などが PHV を⽴てて完全に⼆極化してしまった7)

      これに対しトヨタも燃料電池関係特許の無償公開や社⻑⾃⾝による積極的説明に努めたが治まる気配はなく、2016.11.7 に「トヨタ EV 増産へ」と EV への積極的⽅針を打ち出した。

      その後も何度か EV に対する積極姿勢は⾒せたが、HV と FCV が基本姿勢であることには変わっていない。

      これらの動きを⾒て、各経済・科学誌や今回は⼀般誌まで異論をとなえ、”トヨタの焦燥“、”⽇本経済の試練“、”EV ショック“などが論じられた。

      この中で⽇経ビジネス誌の「すべる経産省」が興味深い8)

      ここで⽇本の頭脳が犯した4 つのエラーとして、

      1. 判断を誤る次世代⾃動⾞、
      2. 攻めないシェアリングエコノミー、
      3. 守り切れないエレクトロニクス、
      4. ⾒ていないエネルギー・電⼒

      を掲げ、この FCV 問題も厳しく取り上げられている。

      トヨタは HV を発売後順調に発展し世界を制した感があるが、ここに来て FCV、HV を固守し過ぎ、欧州中国が全⼒投⼊している EV から取り残されてしまった。

  2. 今後の予想

  3. 図 3 に 2021 年 EV ⾞の世界販売ランキングを⽰ すが、中国が国策で⽀援しているだけあり上位 20 社中 12 社を占めている。

    図 3 2021 年度の世界 EV 販売ランキング 9)
    図 3 2021 年度の世界 EV 販売ランキング9)

    ⾸位の⽶テスラは中国市場が牽引している。

    ⽇本勢では⽇仏連合が 5 位、ホンダが 27 位、トヨタが 29 位につけているが、やはり国としてまとまった⽅針を出している中国の強さが⽬⽴つ。

    今後の販売台数予測を図 4 に⽰すが、EVが全体の約半分を占めるようになると⾒られている。⽇本は今後よほど頑張らないとシェアーを⼤幅に落とす恐れがある。

    世界新⾞市場における電動⾞台数の予測移 10)
    図 4 世界新⾞市場における電動⾞台数の予測移 10)

以上
「機材工」夏季号2022年7月より

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